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【社説】開城工業団地、象徴性より国民の安全が優先

北朝鮮が、昨日始まった韓米合同軍事演習「キーリゾルブ」を問題視し、南北(韓国・北朝鮮)間の通信手段として唯一残っていた軍同士の通信を一方的に遮断する措置を取った。

これによって、南北軍事境界線を経由し北朝鮮の開城(ケソン)工業団地を出入りしていた韓国人要員が足止めされた。昨日、開城工業団地に入ろうとした韓国人約700人が、北朝鮮軍から名簿の通報を受けられなかったために足止めされ、同日、韓国に戻る予定だった約80人の正常な帰途も遮断された。もしかすると開城工業団地に残っている韓国人労働者およそ500人が足止めされ「人質」になる可能性すら排除できない厳しい状況である。

李明博(イ・ミョンバク)政権を狙って、北朝鮮が韓国に対する脅威の度を強めてきたのは昨日今日に始まったことではない。先週は「キーリゾルブ」の期間中に、北朝鮮領空とその周辺を通過する韓国民間機の安全運航を保証できないと脅かし、昨日、北朝鮮軍最高司令部は全軍に「戦闘準備態勢」の命令を予告した。


いますぐにでも何かが起こりそうな一触即発の危機感を高めるために必死になっているといっても言いすぎではない。韓米両国が何度も強調した通り「キーリゾルブ」は攻撃向けの演習ではない。北朝鮮軍が奇襲的に韓国を侵攻した場合を踏まえた、防衛的な性格の合同対応演習にすぎない。今年初めて実施されるものでもない。韓米軍当局は北朝鮮軍に参観まで要請した。

それなのに、北朝鮮がこれを「北朝鮮を侵攻するための戦争演習だ」と強弁し、韓国に対する「立体的な脅威」に臨むというのは、韓国内部の対立と北朝鮮体制の結束を同時に狙う高度な心理戦だというのが大方の見方だ。オバマ米政権で北朝鮮政策を担当するボスワース特別代表が昨日ソウルで、北朝鮮が取った通信遮断措置に遺憾の意をを表明したのも、北朝鮮のこうした意図をよく知っているためとみられる。

軍のホットラインを遮断した措置は、南北が疎通できる最後のルートが消えたことを意味する。南北間で偶発の衝突が発生する場合、速やかに意思疎通ができず、戦争に飛び火する危険性も、理論上排除できなくなったのだ。そうでなくても現在、南北間には緊張の要因が山積している。「韓国との全面対決態勢」を宣言した北朝鮮は、西海(ソへ、黄海)上の北方限界線(NLL)を認めないという立場だ。西海上で、いつでも衝突が起こり得る状況だ。

全面戦争に飛び火するのを望まないならば、北朝鮮はいますぐに軍のホットラインを復元しなければいけない。そうしないことによって招かれるすべての不幸な事態に対しては、北朝鮮が責任を取らねばならない。直ちに直撃弾が撃ち込まれるのは開城工業団地だ。李明博政権発足後に▽団地内韓国人要員の追放▽常駐要員の削減▽陸上通行への厳しい制限--などで圧迫を加えてきたが、ついに人材と物資の輸送を遮断する極端な措置を取ったのだ。

「演習期間中」というただし書きがあるものの、事態が長引く場合、工業団地に常駐する韓国人要員の安否が深刻に懸念される状況が来るかもしれない。南北経済協力の象徴と言える開城工業団地は、紆余曲折にも関わらず、ある程度軌道に乗った。韓国企業93社が北朝鮮住民3万9000人を雇用している。昨年の生産高は2億5000万ドル(約250億円)と、前年比で36%も伸びた。

しかし今はそうした象徴性にこだわるべき時点ではないとみられる。国民の安全より大事な価値はないからだ。国民の安全のために避けられないならば、開城工業団地の全面中断も考慮できるという、決然とした姿勢が必要とされる非常に重要な局面である。



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