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【噴水台】軍備競争



中東の砂漠一帯にはアラビアヤブチメドリが生息する。茶色の羽毛、やや小さい体のこの鳥に只者ではない面があるのを見つけたのは鳥類学者アモスジャハビだ。えさを先に手にしようと労力するどころか、他の鳥と互いに分け合うといって争うのだ。とことん利己主義でかためても生きていくのは大変な野生で、これらが「寄付天使」になろうとやきもきする理由は何か。ハジャビの解釈はこうだ。「自分、他人を手伝えるだけ能力のあるやつなんだ」、分かちあうことで社会的地位を誇示し、異性に魅力的に映ろうとする下心だというのだ。

このようにつがい選びで優位になるためのアラビアヤブチメドリの競争心は群れにも利得を与える。しかし世の中には反対の場合の方が多い。くじゃくのしっぽやヘラジカの角が代表的だ。くじゃくのしっぽが長く、華麗なほどメスがすぐにやってきて、ヘラジカの角が大きくて堅いほど決闘での勝率が高くなってより多くのメスを自分のものにできる。そんな遺伝子が次の世代へと広く広がっていくのだ。しかし長いしっぽは動作をのろくし、大きな角は木にかかって捕食者から逃げるときに邪魔だ。「もっと長くもっと大きく」という競争が、集団全体を危険に陥れるわけだ。


ロバート・フランク・コーネル大学教授(経済学)は、これを軍費競争にたとえた。相手より脅威を感じる武器を持つために先を争って金を浴びせるが、その効果は相殺されてしまって結局、皆が損害を被る消耗戦になるという話だ。それでヘラジカの世界にも「軍費縮小協約」が必要だと言った。例えばヘラジカのオスたちが合意してすべての角を半分の大きさに減らすとしよう。いずれにせよけんかは角の相対的な大きさで勝敗が決まるので、競争の結果は前と同じで群れは皆、安全な生活を享受できるはずだ。気づいてみれば人間社会の一夫一婦制も軍費統制に似たメカニズムだ。一夫多妻制なら多くの妻を従えることができる少数を除いては、大部分男が数少ない女をめぐって殺伐とした競争をしなければならないはずだからだ。

どれ、軍費競争がつがい選びの市場だけのものか。亡国病といわれる私教育競争がまさにそうだ。「隣の家の子供に後れるわけにはいかない」と全国民が競争をしつづける。家ごとに子どもたちはひどい病気にかかり、親は腰が曲がりすぎて折れそうだ。ありがたいことに、ソウルの徳性女子中学が軍縮協約を主唱した。学習塾をやめて放課後学校で勉強するという、私教育を無くす実験を行っている。実質的な多者間協約となるよう、より多くの学校が賛同し、全体の生活の質が高くなることを期待する。このときに私教育の続編ともいえるスペック競争、整形競争にも軍縮の風が吹いたらいいなという夢はちょっと望みすぎだろうか。



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