１９８４年１０月、ニューヨークタイムズには興味深い記事が一つ掲載された。 「ベトナム戦争で米軍司令官を務めたウィリアム・ウェストモーランドがＣＢＳを相手取って起こした名誉棄損訴訟が進行中だ。 裁判がある日はやや赤い顔をした４９歳の男性が法廷に現れ、記者らに資料を配るが、彼はメディア関係者でも弁護士でもない。 ＣＢＳ側に立つ人物だが、ＣＢＳの社員でもない」

いったい‘彼’は誰であり、職業は何だったのか。 主人公はジョン・スキャンロン。広報代行会社の代表だった。 ＣＢＳ訴訟で大活躍したスキャンロンはその後「訴訟ＰＲの父」と呼ばれるようになる。 ニューヨークタイムズの記事は、ＰＲ産業に新しい領域が登場することを知らせる信号弾だった。 記事を書いた記者も当時はスキャンロンの資料配布が次世代広報産業として定着するとは予想できなかっただろう。


訴訟ＰＲは、捜査や裁判など訴訟の結果を有利な方向に率いるのが優先的な目的だが、裁判過程での世論悪化防止を含む、より幅広い広報活動といえる。 特に米国でこの分野が発展したのは、８０年代に入って企業に対する訴訟が相次ぎながらだ。 勝訴することも重要だが、企業イメージの失墜を防ぐのがもっと重要だという認識が根本にある。 訴訟ＰＲ専門家のジェームス・ハガティー氏は「従来のＰＲとは全く異なる分野」と強調する （『世論の法廷で』）。複雑な法律問題を簡単明瞭に伝えなければならず、数年にわたって行われるという点で、長期的な見識と繊細な強弱調節も必要だということだ。

代表的な失敗事例には英国であったマクドナルド名誉棄損事件が挙げられる。 マクドナルドは９４年、自社を誹謗する印刷物をばらまいた容疑で無名の環境活動家２人を告訴した。 数十人の弁護士を動員した３年間の訴訟で損害賠償判決を受けた。 しかしすぐに世論の激しい逆風にさらされた。大衆の目には巨大企業と弱者の争いに映ったからだった。

韓国の捜査と裁判でも世論の重要性が次第に高まっている。 インターネットの発達で捜査・裁判状況がリアルタイムで伝えられ、ネットユーザーの討論対象になるケースが増えている。 毎日、陪審裁判が開かれ、全国民が陪審員になるというわけだ。 「ミネルバ」事件から竜山（ヨンサン）惨事まで、今年に入って起きた事件だけを見ても、捜査の結果発表前はもちろん、その後も論議が繰り返されている。 検察がきちんと捜査するのは基本だ。 いまやどのようにすれば国民の信頼を高められるかも深く悩まなければならない時代になった。