１９８０年、３０余人を殺害した容疑で逮捕された米国の殺人魔テッド・バンディは、裁判の途中、証人として出席していたキャロル・アン・ブーンに「私と結婚してくれれるか」と尋ねた。 ブーンは涙を流してうなずき、法廷で結婚式が開かれた。

ハンサムな外貌と話術に加え、法学部卒業の学歴まで備えたバンディはマスコミの注目を受け、‘殺人貴公子’というニックネームとともに一躍スターダムにのし上がった。 ファンレターが押し寄せ、一部の人は彼が真犯人であるはずがないと主張した。 バンディは８９年に死刑が執行される直前、自分の弁護人との艶聞も広めた。


ハンサム殺人魔に関する記録には、ほぼ例外なく殺人魔に魅力を感じた女性たちの話が書かれている。 英国の女性ジャーナリスト、サンディ・フォックスは７４年、米国アトランタのあるバーでハンサムな青年ポール・ジョン・ノウルズに会った。 フォックスは７７年に書いた著書『キリングタイム』で、ノウルズは「すぐに目につくハンサムな顔と洗練された服装をしていた」と回顧した。

この時すでに１８人を殺害していたノウルズはその日夜、自身の犯行の相当部分を告白、フォックスは「背筋がぞっとするのを感じたが、彼は相変わらず魅力的だった」と伝えた。 後日、逮捕されたノウルズには面会を求める女性が絶えなかった。 マスコミはノウルズを‘カサノバキラー’と命名した。

ハンサム殺人者の人気はどこからくるのだろうか。 犯罪心理学者は危険な犯罪者に性的魅力を感じる傾向を‘ハイブリストフィリア’（Ｈｙｂｒｉｓｔｏｐｈｉｌｉａ）と呼ぶ。 これに関する有力な説明は救援ファンタジーだ。 女性は、たとえ相手が連続殺人魔だとしても、自分の愛で彼を変えることができると信じるということだ。 いわゆる‘美女と野獣シンドローム’だ。

このほかにも裁判が与える緊迫感が見る人を性的に興奮させるという仮説、また有名な人に対する無条件の憧憬、犯罪者の内面の孤独さは自分だけが慰められるという思いなどがある。 そして時々見られるハンサム型犯人はこうした傾向を最大値に押し上げるということだ。

殺人魔カン・ホスンのハンサム型外貌が公開され、多くの人に衝撃を与えた。 彼が自分の魅力を被害対象の女性を誘惑するのに使ったという捜査報告が戦慄を覚えさせるなか、インターネットには‘カン・ホスン・ファンコミュニティー’までが登場した。 誰かの幼稚ないたずらだと願いたい。

最近も一部でＫＢＳ（韓国放送公社）２テレビドラマ「花より男子」などのテレビ番組が外貌至上主義を煽っているという声がある。 しかしハンサム殺人魔をめぐる記録を見ると、外貌に対する好みはすでに人類の遺伝子に刻印されているのではないかと感じる。