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22日公開された映画『作戦名ワルキューレ(Valkyrie)』は、1944年にヒトラーを暗殺し第2次世界大戦を早期に終息させようとしたドイツ軍部のクーデターの試みを含んでいる。 最近来韓した主人公トム・クルーズは、出演の理由を尋ねられると、「当時ドイツのすべての人々がナチスの操り人形だったわけではないことを伝えたかった」と答えた。
タイトルのワルキューレは北ヨーロッパ神話に出てくるワルキューレ(Walkure)の英語式発音。 しばしば鎧をまとった姿で空を飛ぶ女神らで描写されるワルキューレは、戦死した英雄の魂を天国に導く役割をしている。 ワーグナーの4部作楽劇「ニーベルングの指環」の第2部のタイトルでもある。
ヒトラーはゲルマン神話を素材にしたワーグナーの作品がドイツ民族の魂を鼓吹させるとし、惜しまない愛を注いだ。 特に愛用されたのが「ワルキューレ」第3幕に出てくる「ワルキューレの騎行」だ。 当時ドイツ戦車部隊は外部のスピーカーで「ワルキューレの紀行」を浪々と流して進軍したりもした。
こういう悪縁のためイスラエルではどんな音楽会であれ、ワーグナーの曲を演奏することはタブーとして扱われてきた。 ナチスによって虐殺されたユダヤ人に対する礼儀ではないというのが主な理由であり、ワーグナー自身が有名な反ユダヤ主義者という事実も理由だった。 このタブーは、2001年7月7日に米国出身のユダヤ人指揮者ダニエル・バレンボイムによって破られるまで堅く守られてきた。
ここにも曲折がある。 普段からイスラエルの対アラブ強硬策を批判してきたバレンボイムはこの年、エルサレムでテノール歌手プラシド・ドミンゴとともに「ワルキューレ」のハイライトを演奏すると発表した。 当然、ホロコーストの犠牲者の遺族の世論が沸き上がり、結局、他意によってレパートリーが変更された。 しかしバレンボイムは演奏当日、即席で聴衆にアンコールでワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」のうち一曲を演奏すると明らかにした。 一部からは揶揄があったが、バレンボイムは「いつまでも自分たちが犠牲者だと言ってはならない」という主張を曲げなかった。
映画「作戦名ワルキューレ」は、見幕なナチスの統治下でもすべてのドイツ人が権力に屈従したのではないという事実を見せ、バレンボイムの「ワルキューレ」は、すべてのユダヤ人がアラブとの共存を否定しているわけではないことを知らせた。 ヒトラーの象徴音楽として使われた「ワルキューレ」が、時代を越えて多数世論の圧力に屈しない良心の声を知らせる契機になったという事実も歴史のアイロニーだ。 イスラエル軍の無差別砲撃で数多くの犠牲者が発生したガザ地区の現実はバレンボイムの声をもう一度思い出させる。
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