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ドキュメンタリー映画『すまない、独島よ』は目的意識を明確に表しながらも、みすぼらしいスローガンとして強弁しない美徳を備えている。独島(トクト、日本名・竹島)領有権問題を扱うこのドキュメンタリーの立場と一致する部分だ。
「独島はすでに韓国領土」であり、「韓国領土」とは「生活の根拠地」という見解だ。これを実感させる点は2つある。一つは実際に独島に住む人だ。唯一、いや‘唯二’の住民である60代の老夫婦が漁船を運営し、海産物を獲り、陸地から遊びに来た孫を明るく迎える日常は、‘人が住む土地’独島を感じさせる。
もう一つは自らの目線で独島に接する大学生だ。大学生らは6000人から手形を受けて超大型の太極旗(テグッキ、注:韓国の国旗)を完成し、独島沖に浮かべるイベントを準備する。海外で独島問題の討論会に出席する若者や、都市の中心部で「独島愛」を掲げフリー・ハグズを行う若者も登場する。このように独島にかかわってきた若者が独島を訪問して感じる瞬間、予想外の感動が客席にも伝わってくる。苦労して作った太極旗が青い海の上に広がるラストシーンは、こうしたドキュメンタリーでは珍しいスペクタクルを演出する。
同ドキュメンタリーの根底には、最近の若年層、つまり就職市場では「給料88万ウォン(約6万円)世代」とされ、自負心と熱情では「ワールドカップ(2002年のサッカーW杯)世代」と呼ばれる人たちの新たな感性と運動方式だ。
ドキュメンタリーには登場しないものの、広告費を集めて海外の有力紙に独島の広告を掲載する行為や、こうしたドキュメンタリーを制作する行為自体が、彼らが選んだ新たな形の事例だ。米紙ニューヨークタイムズに独島領有権を知らせる全面広告を掲載し、話題を集めた徐敬徳(ソ・キョンドク)さんは同ドキュメンタリー映画に企画プロデューサーとして加わった。
「生活の中のイベント」を掲げる彼らの立場は、従来の取り組み方への批判と反省が前提になっている。日本の挑発行為がある度に広がる「悲憤慷慨(こうがい)」の世論や政府の不十分な対応の問題点にも触れている。
『すまない、独島よ』は、領有権問題の始原や生態的かつ地政学的な情報を訴えていない。独島に関する大量な知識を含む映像はこれまでも少なくなかった。このドキュメンタリーは「知識」ではなく「感性」を重視している。独島問題の完結版とはかけ離れているものの、劇場用の初のドキュメンタリーとしての企画趣旨には共感できるほどよく表現された映画だ。
商業映画の制作者だったチェ・ヒョンムク監督が演出を、歌手のキム・ジャンフンがナレーションをそれぞれ務めた。31日に公開される。すべての年齢層で観覧可能。
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