昨日１枚の写真が国民の胸を打った。夜明けに市場を訪れた李明博（イ･ミョンバク）大統領の懐に抱かれて干し菜を売るおばあさんが泣いている場面だった。これ以上何の説明が必要か。写真には涙が流れていたが冷酷な危機の現実には血の涙が流れている。大統領はおばあさんに２０年間使ってきた襟巻きを与えた。そんな心も重要だが、もっと重要なのは少しでも涙をぬぐってあげることができる具体的な対策だ。

大統領にソロモンの知恵を出せというのは、実は無理だ。危機が外とつながっているからだ。韓国政府がいくら賢い政策手段を使ってみようとしても外国の金融の波がだぶつき、輸出市場が縮小すれば政策効果は減る。国内でも大統領は政界に取り囲まれている。予算案を提出したが与・野党が争っており、法案通過はできずにいる。第１野党民主党代表が拒否していることから青瓦台会同もなくなった。

それでも我々はまた大統領に言わざるを得ない。戦争のような危機のときはリーダーの覚悟と行動が国民の心を動かす。朴正煕（パク・チョンヒ）大統領は西ドイツへ行った鉱夫と看護師を集めて「我々も一度、より豊かに生きよう」と涙を流した。ブッシュ大統領は９・１１テロの現場で涙を流し、遺族と抱きあった。オバマ米国次期大統領は経済危機を懸念し「眠れないときがある」と述べた。李明博大統領もラジオ演説のたびに民生を心配した。首席秘書官会議では危機意識が見えないと叱咤した。しかしなんだかまだ国民の胸にくることはあまりない。米国との通貨スワップ締結の瞬間、息が通るように感じたが、それは庶民とは距離が遠い通貨問題だ。庶民はいま１日３食暮らす問題に恐怖を感じる。


朴炳元（パク・ピョンウォン）青瓦台経済首席は「状況が悪くなれば（政府のマクロ経済協議会を）“ウォールーム”（Ｗａｒ　Ｒｏｏｍ：戦時作戦室）」体制に切り替える用意ができている」と言った。いつまで準備ばかり何度も言っているのかもどかしい。李明博大統領は自ら経済大統領だと言わなかったか。国民は大統領が自分の特長を発揮して具体的対策をより積極的に展開することを期待している。今の経済危機を一種の国家非常事態と認識、本人が直接ウォールームを指揮して国難克服対策を導かなければならない。大統領が直接手をさし出して野党と朴槿恵（パク・クンヘ）元代表勢力も抱えこまなければならない。立派な大統領が出れば立派な閣僚が出て、与党も身を軽くして動く。大統領が国民の心をつかめば国民を恐れても国会があんな行動を見せることはできないだろう。