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実験用マウスに麻薬を与えると、餌に背を向けるほど麻薬に没頭する。 しかしマウスの立場で考えてみよう。 狭苦しい鉄格子の中に囚人のように閉じ込められているのだから、麻薬でもせざるをえないのではないだろうか。 もし幸せなマウスだとすれば麻薬を遠ざけはしないだろうか。
1981年、カナダのサイモンフレーザー大学では、こうした問題意識を抱いて実験が行われた。
まず、快適な「マウス公園」をつくった。広い空間においしいチーズと遊び器具を置き、雌・雄16匹を一緒に入れた。 モルヒネを入れた砂糖水と真水を同時に提供した結果、マウスは真水を主に飲んだ。 鉄格子の中で同じ選択を目の前にしたマウスは、「マウス公園」のマウスに比べて、モルヒネ砂糖水を最高16倍も多く飲んだ。 麻薬中毒は麻薬ではなく劣悪な環境に主な責任がある、というのがこの実験の意味だ。
英国北部ウェールズの警察局長リチャード・ボランストロームは麻薬合法化を主張する。
彼はこう話す。 「国家は麻薬との戦争で敗北した。 中毒者は急増し、犯罪集団は莫大な収入を得る。 いまや道徳主義的ドグマから抜け出し、実用的かつ現実的な政策をとらなければならない。 国家が麻薬を合法化して直接販売すれば、犯罪集団の収入源を断ち切り、関連犯罪を減らすことができる」。現実を認めようという彼の主張は急進的だ。
その延長線上にある国がスイスだ。 世界で初めて麻薬中毒者に対するヘロイン処方を連邦政府の政策で公式採択した。 先月末の国民投票で68%の支持を得て通過した。 中毒者にヘロイン注射を打つことで、正常な社会生活への道を開き、関連犯罪も減らそうという政策だ。 あまりにも中毒者が多いため、その弊害でも減らそうという窮余の策でないはずがない。
韓国はどうか。 成人のうち生涯1回以上麻薬を経験した人は19万-39万余人、大麻の経験者は26万-90万余人と推算される。 麻薬退治運動本部が、2006年および2007年に実施した薬物乱用実態調査と刑事政策研究院(2005年)、ソウル大薬科大教授チーム(2004年)の調査を総合して推定した。 このように麻薬使用者が増えている韓国も今後、スイスのようにならないという保証はない。 そうなる前に取り締まりをより徹底して行わなければならない。 しかし長期的な対策は公園ではないだろうか。 人々が麻薬に陥らないよう、胸中の公園をつくるということだ。
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