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彼女のスペック(資格条件)は幻想的だ。外国語は同時通訳水準で、飛行機操縦もできる。 名人から直接伝授された料理の秘法を誇るかと思えば、次は核燃料取扱資格証まで出す。 マーケティングも達人だ。 国会議員3人を当選させた遊説の実力でバレンタインデーチョコをあっという間に売りさばく。 いつも正社員をやり込める彼女は非正社員の自尊心。 きっかり契約期間の3カ月間だけ働き、泣きながら引き止める会社を未練なく離れる。 そしてスペインのアンダルシアへ飛んで行き、人生を楽しみながら次の準備をする。
もちろん実存する人物ではない。 日本ドラマ「ハケンの品格」に出てくる主人公の話だ。 今年初め国内のケーブルテレビで放送され、人気を呼んだ。 一流銀行の正社員だったがリストラされた主人公の大前は、身を削る思いで訓練した結果、万能派遣社員に変身した人物だ。 しかしこのドラマが共感を得たのは主人公より助演のおかげだ。正社員に無視されて雑用をする小心の派遣女子社員を通じて現実を生々しく描写した。 このドラマは低調にスタートしたが、最終回の視聴率は26%を超えるヒットとなった。 小泉元首相の息子・小泉孝太郎が男主人公として登場した点も一助となった。
現在、日本の非正社員は1700万人。 職員3人に1人の割合だ。 相当数が低賃金であるうえ、3カ月ごとに契約を更新する雇用不安の中で生きている。 こういう人たちがこのドラマの絶対的な支持層だった。 ドラマを通して社会に深刻なメッセージを投じるのに成功したのだ。 韓国の非正社員は800万人を超える。 比重でいうと全体職員の60%。 日本より2倍も高い。 にもかかわらず、国内ドラマは相変わらず‘出生の秘密’に重みを置いている。 非正社員はかろうじてインディペンデント映画に登場する程度だ。
経済が厳しくなると社会的弱者から苦痛を受ける。 日本政府は4日前、緊急雇用対策本部をまず設置した。 厚生労働省は「非正社員をむやみに解雇する企業には強力に対処する」という‘脅迫’もはばからなかった。 半面、韓国は若者の失業だけを浮き彫りにする感じだ。 非正社員問題は使用期間制限(現行2年)をめぐって争っているだけだ。 11月3日発表の経済難局総合対策にもかかわらず、非正社員は不動産・減税に押し出されて、わずか2行の言及にとどまった。 結局、ドラマのように非現実的な万能社員になることを強要するのか。 非正社員に寒い冬が迫っている。
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