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映画『それでもボクはやってない』は、日本の司法制度の問題点一つひとつ追求していく技法に誠実さがみられる。法的手続きはもちろん、弁護士をどうやって指名すればいいのかすら知らない一般人たちが経験する挫折やと不合理を、やや低いトーンで、しかし執拗に見せる。日本で日常みられる電車での痴漢を素材にしたことから意図が明確だ。ささいに見えても、生計型窃盗などと違い、公憤を促す悪質犯罪という点からだ。処罰されて当然のこの犯罪を通じて「10人の罪人を逃すとしても、1人の罪のない人を罰してはいけない」というメッセージを挑戦的に投げかける。主演の加瀬亮も好演をしたが、より印象的なのは青年の母親(もたいまさこ)だ。声を荒げることなく、無表情に近い顔で息子の裁判を見守るその姿が、法の前で感じる無力感をいっそう強く物語る。
『Shall we ダンス?』以後11年ぶりに新作を発表した周防正行監督はレンガを一つひとつ積み上げるように映画を作った。才能を誇示するための装飾に目もくれず、しっかりした構造に集中する。劇的な反転のようなものはない。物静かに積みあげた映画の力を通じて最後に胸が詰まるようなうっぷんを味わう。映画の中の場面には韓国の現状に似た点が少なくない。法曹界関係者たちにあまねく一見を勧め、反応を聞きたい映画だ。11日公開。
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