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女優ムン・グニョンさん(21)をめぐる論争が佳境に入っている。
今月13日、社会福祉共同募金会(理事長:李世中)はムン・グニョンさんがこの5年間、非公開で8億5000万ウォン(約5700万円)を寄付してきたと明らかにした。
これに対しインターネット上では「さすが‘国民の妹’だ」「立派だ」という書き込みが多かった。もちろん「人気狙いなのが見え見え」という悪質な書き込みも少なくなかった。
ムン・グニョンさんの寄付ストーリーが単なる悪質な書き込みをめぐった論争とは異なるレベルのものに拡大されたのは、彼女の家族史が再浮上してからだ。ポイントは彼女の外祖父リュ・ナクチン氏だ。05年に死去した同氏は、韓国戦争(1950~53年)当時にパルチザン活動を行った。リュ氏は71年に、湖南(ホナム・全羅道)統一革命党再建委員会事件により19年間服役した後、仮釈放された。94年には救国戦線準備委員会事件で再逮捕された。こうした左翼活動のためにおよそ30年間にわたって服役した、いわゆる「非転向長期囚」(思想の転向を拒否し長期服役した北朝鮮の捕虜など)なのだ。
ムンさんのこうした家族史は04年、大衆に公開された。今回ムンさんの善行が報じられた後、右翼を代表する論客の池萬元氏(チ・マンウォン、66、軍事評論家)は「ムン・グニョンはパルチザンのもとで育った」という文を皮切りに、18日まで9件の文をホームページに掲載した。
池氏は「ムンさんの善行は正しいことだが、彼女を‘天使’と褒め称え、パルチザンの孫娘という点と結び付け、‘パルチザンも天使のような人’とイメージ付けようとする(左翼勢力の)心理戦だ」という見方を示した。
池氏はムンさんが朝鮮(チョソン、1392~1910年)時代の画家、恵園申潤福(ヘウォン、シン・ユンボク)役で出演中の時代劇『風の絵師』と、同じく申潤福を扱った映画『美人図』も問題視した。映画『美人図』で主演したキム・ミンソンさんは、米国産牛肉に反対するろうそくデモの支持者であり、ムンさんは左翼の孫娘だから、何かおかしいということだ。池氏は両作品に「おかしな女優」が出演し「申潤福シンドローム」を作りだしていることに、何かの背景があると強調した。
これを受け、左派論客の陳重権(チン・チュングォン)氏は「70年代に反共教育を受けた小学生が書いた文のようだ」と批判した。進歩新党もムンさんを激励する手紙を公開的に送った。これまで北朝鮮人権問題を批判してきたインターネット上のメディア「デイリーNK」もコラムを通じ「彼が‘保守’‘愛国’などと自任し、保守右派陣営のブランドを傷つける行為だ」と非難した後「池氏のような人は決して健康な右派になれない」という見解を示した。
ソウル大社会学科の林玄鎮(イム・ヒョンジン)教授は「ムン・グニョンさんをめぐる極端な諸発言は、韓国社会が信頼の危機に陥っていることを示す。特にネット上で、少数の論者が偏向された見解をもとに、世論を誤った方向へ導いていく場合、社会が深刻に分裂する様相を見せるかもしれない」と懸念している。
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