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在日韓国人の物理学者が超伝導物質の結晶構造を究明し、高温で実用化できる新素材の開発を主導している。超伝導体は電気抵抗を受けないため、遠くに送る電力の損失を減らせる夢の素材だ。
主人公は今年8月、日本物理学会のニュースレター(JPSJ)に研究論文を発表した産業技術総合研究所(AIST、産総研)エネルギー技術研究部門の李哲虎(イ・チョルホ)博士(39)。
基礎科学分野で13人のノーベル賞受賞者を輩出した日本で、韓国国籍の科学者が注目を集めるのは異例。筑波にある日本最大の物理学研究機関、産総研の研究室で、李博士に会った。
李博士は「86年に発見された銅酸化物の高温超伝導体が現在最先端の超伝導体」とし「私の研究成果は高温で活性化できる結晶構造を見つけだしたことだ」と述べた。
これまで世界の物理学界で超伝導体の研究は足踏み状態にあった。このため、李博士の業績は「新しい超伝導体の発見」という物理学界の長い間の課題を解決する道を開くものとなる。しかし製品開発につながるまでは前途が長い、というのが李博士の評価だ。
李博士は「新素材が製品化される場合、高電圧を送電するために都心の地下30メートルまで電線ケーブルを埋める必要がなく、地下2メートルに埋設しても送電が可能になる」と説明した。現在使っている電線ケーブルは送電中、400キロメートル当たり1万キロワット(10万世帯が使用できる分量)の電力を浪費する。
電力の損失を大きく減らせる新しい超伝導体を開発するために日本は独ケルン大、仏ラウエランジュバン研究所とともにプロジェクトを進めている。ここで李博士は重要な役割を果たしている。
9月1日付の日本経済新聞は李博士の研究成果を報じ、「李哲号博士など日独仏研究チーム」と書いた。李博士は「韓国の物理学界とも研究成果を共有したいが、韓国語ができないのが障害」と話した。
李博士は最近、講演活動でも忙しい。夢の超伝導体の結晶構造を究明した後、講演の要請が相次いでいるからだ。来月1、2日に名古屋で開かれる日本中性子科学会にも特別演説者として招かれた。
在日韓国人3世の李博士は、核物理学者の父とともに9歳までフランス・ドイツで学校を通った後、日本に戻って勉強を続けた。88年に国立東北大の物理学科で博士課程を修了した。97年から日本科学技術庁の特別研究員となり、01年から産総研に勤めている。05年からは研究所内のベンチャー企業の代表取締役も兼職している。01年に日本人女性と結婚し、1歳の息子がいる。
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