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<コラム>黒人の大統領、白人の大統領

 オバマは人種という隠せない差を乗り越えた。 黒人奴隷問題で戦争まで繰り広げてから143年、初めての黒人大統領が選ばれたのだ。 最も感激したのは当然、黒人だった。 だからといってこれは黒人だけの勝利ではない。

黒人投票者の96%がオバマに投票したという。 圧倒的な支持だ。 白人投票者は43%がオバマに投票した。マケインに投票した白人(55%)のほうが多い。 白人だけが投票したとすれば、マケインが当選していたということだ。

しかし黒人の有権者は13%にすぎない。 白人(67%)とは比較にならない。 ヒスパニック(15%)よりも少ない。 しががって黒人が96%ではなく100%投票しても、黒人の力だけで黒人大統領を生み出すのは難しかった。 白人の43%がオバマの皮膚の色を問題にせず支持したことで可能だったのだ。


人種差別の被害者の黒人よりも白人のほうが寛容的だということではない。 しかしオバマに投票するうえで皮膚の色にこだわらなかった白人こそが、今回の選挙の真の勝利者だと賛辞を送りたい。 さらに55対43なら、同じ白人候補の間の対決でも見られる比率だ。 世論調査と実際の投票の結果が異なるブラッドリー効果もなかった。 人種の偏見を克服したと米国市民全体に拍手を送ってもよいほどだ。

オバマは当選が確定した4日夜、シカゴのグラント公園で演説した。 「この勝利が誰のものかは決して忘れない。 これはみんなのものだ」。オバマが話した‘みんな’とは黒人ではない。 自分に投票した有権者でもない。 新しい変化を起こした米国国民全体のことを言ったのだ。

「リンカーンはもっと分裂した状況でも、私たちは敵ではなくて友人だと語った…見解が一致しない時はみんなの声を聞き、国を再建する仕事にみんなの賛同を要請する…」。

オバマはこのように和合と統合の政治を強調した。 オバマが初めて黒人大統領になれたのは、まさにこの和合のリーダーシップのおかげだ。 彼は上院でも共和党議員と手を組んで法律を作った。 「ハーバード・ロー・レビュー」編集長を務めても、保守派の人物を編集者に選んだ。 彼が白人を敵対視し排斥する人種主義者だったら、大統領になるのは難しかったはずだ。 オバマが先に人種の壁を崩したから白人の支持を受けることができた。

オバマは党内選挙が終わると、ヒラリーの参謀までも起用した。 クリントンとの共同政府という言葉まで出てきた。 政権引継ぎチームにはチーム長のウェンディー・シャーマン国務省顧問をはじめ、クリントン政府の人物が多数含まれた。 G20首脳会議にはクリントン政府の国務長官オルブライトと共和党所属元下院議員リーチを代表として送った。 経済危機を超党派的に対処するという意志をはっきりと示したのだ。

97年に金大中(キム・デジュン)大統領が当選した当時も、われわれは似た感激を味わった。 当時は湖南(ホナム・全羅道)出身者が大統領なるのは不可能だと信じる人が多かった。 人口比率が嶺南(ヨンナム・慶尚道)圏の半分程度だったからだ。 それほど東西間の地域葛藤が深刻だった。 金大中大統領の支持者の柳時敏(ユ・シミン)元議員までも『ゲームの法則』という本を書いて当選の可能性を否定した。

しかし金大中大統領は努力を続けた。 金大中大統領が協調した「ニューDJ」というものも、嶺南と中道保守層を抱え込む努力だった。 民正党出身の李鍾賛(イ・ジョンチャン)元議員を引き込み、盧泰愚(ノ・テウ)大統領の政務首席だった金重権(キム・ジュングォン)氏を初めて大統領秘書室長に起用した。 微小かもしれないが、嶺南圏を含む非湖南圏でも支持を得たから大統領になることができた。 就任後は偏重人事をめぐる論議があったものの、積極的な努力があったからこそ不可能を可能に変えることができた。

盧武鉉前大統領は自身の路線を追従しない勢力はすべて打倒対象と見なした。 自ら鮮明に区分した。 386世代(90年代に30歳代、80年代に大学生で学生運動に参加し、60年代に生まれた人)と考えが異なる国民は打倒の対象と見なした。 執権党の内部でも対立があった。 国民に恥ずかしい思いをさせ、嘲弄の対象とするのは決して最高指導者がすることではない。 オバマが今でも白人を打倒の対象とする政策を推進すれば失敗した大統領になるしかない。

政権が変わっても変わらないのはこうした偏狭さだ。 国が破綻しそうな危機に直面しても、韓国の政治家は与野党に関係なく政治攻防ばかり繰り広げている。 執権党の人たちが党内選挙のわだかまりも解消できず「なぜそこで飯を食うのか」と幼稚な‘派閥取り締まり’をしているのだから、野党を非難することはできない。 つまらないその主流派閥までも分裂して特定集団の役割論を騒いでいるのだから呆れてしまう。



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