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成均館(ソンギュングァン)大医大三星(サムスン)ソウル病院神経科の羅悳烈(ナ・ドクリョル)教授(52)教授の研究室。 入るとすぐに小さな包みが目に入る。 透明な包装紙に包まれたもの、化学処理された人間の脳だ。 これを両手で持ち上げて「大きさと状態から見て成人女性の脳のようだ」と話す羅教授の目には愛情が感じられる。 このため羅教授は「毎日脳を触る男」と呼ばれている。
認知神経学専門医の羅教授は最近、『前頭葉人間』(ホウォンメディア)という本を出した。 「大衆を対象にした前頭葉関連の書籍は初めてのはず」というのが羅教授の説明だ。 羅教授がこの本を書いた理由は「前頭葉型人間運動」を繰り広げるためだ。 ‘前頭葉’の重要性を強調する運動だ。
「前頭葉は人間を人間らしくさせるカギ。 各種刺激を受けて反応する後頭葉とは違い、前頭葉は動機を付与し、衝動を抑制し、計画を立てる機能をする。 企業でいえば最高経営者(CEO)にあたる。 その機能がなければ‘自分’という人間は消える」
羅教授は自ら‘前頭葉型人間’の典型と考える安哲秀(アン・チョルス)KAIST(韓国科学技術院)教授と歌手パク・ジンヨンさんにインタビューをし、本に載せた。
しかしこの本でもっと目を引くのは診療過程での羅教授の経験だ。「恥じ知らずおばさん」や「静かになった虎じいさん」がその例だ。 かつて人助けばかりしていたおばさんが突変し、恥知らずのわがままになり、文句ばかりいう人間に変わった。 確認してみると、前頭葉痴呆で社会性が低下したのだ。 大きな声で怒鳴っていたじいさんが突然、言葉を忘れ、すべてのことに無関心になったので、検査をしてみると、前頭葉に血栓ができていた。 前頭葉が損傷し、動機が付与されず、すべてのことに意欲を失うことになった。
羅教授は「こうした事例を他人事だと考えて聞き流すべきではない」と強調した。 突然ぼうっとすることが増えたり、判断ができなくなれば、前頭葉の活動に赤信号が灯った可能性があるということだ。
羅教授は「飲酒は前頭葉に直撃弾を放つ行為」と警告した。 「酒を毎日飲む人の脳を撮影すると唯一、前頭葉がゆるくなっている。 特に爆弾酒(焼酎とビールを混ぜた酒)を続けて飲むことは、脳を緩ませる近道になる。 一方、常に変化を主導し、自己啓発に熱心なCEOの脳は前頭葉が特に厚い」
すでに爆弾酒で脳が緩んでいてもまだ希望はある。 「脳細胞は破壊されるだけで再生はされないと知られている。しかし意識的な訓練を続ければ脳の柔軟性が高まる、というのが最近の医学界の発見だ。 努力すれば前頭葉が厚くなるということだ。 このように脳細胞を貯蓄すれば認知症にかかる速度も落とせ、認知症にかかっても少なくとも人間らしさは維持できる」
では、どんな訓練が必要になるのか。 「外部の刺激を受け入れる役割をする後頭葉を休ませて瞑想などをする。 根本的な質問を自身に投じて自分の中で答えを探しながら前頭葉を訓練する。 一言で、脳をリセット(reset:再始動)するということだ」
具体的な方法にはどういうものがあるのか。 「感覚を受動的に受け入れるよりも能動的に、また自発的にする仕事を探してしなければいけない。 テレビを消して本を読むという方法がある。 外国語を習うのもよい」
なら羅教授は前頭葉型人間なのか。 羅教授は首を横に振った。 「私も完璧な前頭葉型人間にはなれない。 ひたすら努力するだけだ。 努力すれば芽生えてくるように、脳細胞の神経束が厚くなり長くなる。 運動を続けて爆弾酒を遠ざけてほしい。 脳が緩むよりかはよいはずだ」
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