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2001年MBCで放送した『おいしいプロポーズ』というドラマがあった。2000年年末から制作陣はキャスティングのために奔走した。チャ・テヒョン、キム・レウォン、パク・ジンヒら前途有望な俳優たちが挙がったが、すべて断られ、結局男女2人ずつ4人の主演が公開されたとき、MBCドラマ局は沈痛な雰囲気に包まれた。
主演を演じる男性はチョン・ジュンとソ・ジソブ、女性はソ・ユジンとソン・イェジン。当時、チョン・ジュン(子役出身)は代表作といえば青少年ドラマ『思春期』であり、ソ・ジソブも3年後に放送される『ごめん、愛してる』以後のソ・ジソブとは全く違うのだが、それでもまだよかった。ソ・ユジンも新人同然だったが、ソン・イェジンはドラマ出演経験がひとつもなかったのだ。当時のドラマ局長は「MBC歴史上、出演作が1作もない俳優をミニシリーズの主人公にキャスティングしたのは初めて」と舌打ちをした。
ところがこのドラマは視聴率30%を超えるビッグヒットを記録、終了する日までイ・ビョンホン、リュ・シウォン、チェ・ジウらトップスターたちが布陣した裏番組『美しい日々』を圧倒した。満19歳のソン・イェジンは一躍シンデレラとなった。あれから7年。ソン・イェジンはおない年であるソン・ヘギョ、キム・アジュン、ハン・イェスルとともに「82年生まれの美女軍団」の中核を成している。この華麗なスター級の中でも“無名時代の悲しさ”を経験したことのないのはソン・イェジンだけだ。
それにこの俳優のフィルモグラフィーを見てみると、妙な特徴が現れる。ほとんどすべての女優は実生活より作品の中でずっと若い。40代の女優たちは映画やドラマで30代の役を、30代は20代役を演じたりする。子をもつ母親でも未婚の役をやったりするのが芸能界の流れなのに、ソン・イェジンは例外だ。映画『妻が結婚した』で人妻役を演じたのが、2004年の映画『私の頭の中の消しゴム』、2005年『四月の雪』に続き3度目だ。ドラマ『恋愛時代』では離婚女性の役を演じている。みんな今より3~4年ぐらい年上でもできた役だ。
ではどうしてそうだったのだろうか。これに対するソン・イェジンの返事は「あら、そうだったんですか? 気がつきませんでした」だ。作品を選ぶとき、主人公の年齢や結婚しているかどうかは考慮せず、どんなキャラクターかということだけ考えて、そのようになったという話だ。絶対多数の女優が1歳でも若いイメージを保とうと既婚女性、特に母親役はどうしても拒否する、というのとはかなり違う。
これを通じてソン・イェジンは自分と同じ年齢のほかの女優とまた線引きした。これこそ演技力に対する評価だ。
実際より年を取った役を演じるのは誰でも信じて任せられることではない。映画『喧嘩-ヴィーナスvs僕-』でソル・ギョングの妻役を演じたキム・テヒが良い例だ。
ソン・イェジンは作品を通じて多様な成功の道を歩み、これを通じて個人的にも大きな収穫を得た。デビュー初期から「猫かぶり」「高慢ちき」などといったインターネットの書き込みでソン・イェジンをいじめた数多い“アンチ”グループも、ドラマ『恋愛時代』以後、彼女の実力を認め、離れていったのだ。
ベストセラー小説を映画化した『妻が結婚した』にはすでに男と結婚したが、新たに愛する男ができたのでその男とも結婚するという女が登場する。劇中、夫がこんな話にならない要求に屈服するほど、彼女には愛嬌と魅力があふれる。
この役を演じたソン・イェジンはどうだったろうか。ある映画広報会社の代表は試写中、2度も席をはずした。「ソン・イェジンがとてもこ憎たらしくて、腹が立ち、見ていられなかった」という。大多数の男が小説『妻が結婚した』を読んで感じた感情と大きな違いがないのを見れば、彼女の演技がうまかったという意味とみても、無理がなさそうだ。
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