![]() |
|
指揮者がいないオーケストラがある。 世界3大アンサンブルの「オルフェウス室内管弦楽団」だ。 団員が毎回投票で楽長を選び、公演を率いる。 中央集権的な指揮者の統制はない。 華麗な腕並みの演奏者が奥妙な和音を作りだす。 米国式市場自律主義というわけだ。 このオーケストラが守る唯一の義務はチューニング。 すべての楽器の基本音を合わせてこそ不協和音が出ないからだ。その主人公がオーボエという木管楽器だ。
オーボエは一時、中世教会から追放された。 「霊魂を奪っていく」という容疑を受けた。 あまりにも美しく哀切な音色が神聖とぶつかったのだ。 オーボエはまた忍耐が必要な楽器だ。 甘美で悲しい旋律を出そうとすれば呼吸を長く堪えなければならない。 それでも生き残ったのがオーボエだ。どんな環境でも最も安定した音を出すからだ。 交響楽団は演奏前にオーボエに合わせてチューニングをする。 バイオリンやチェロはオーボエが出すA音に合わせて弦を張ったり弛めたりする。
オーケストラの警戒対象1号もオーボエだ。 独特の音色が他の楽器音に埋もれず抜け出てくるからだ。 オーボエを誤って吹けば逆ハーモニックス現象のため全体公演を台無しにしてしまう。 それでオーボエは凄絶な求道者的楽器といえる。 演奏者は毎日祈る心情でリ―ド(口にくわえて空気を吹き込む薄片)を削って手入れする。 小さなずれでもとんでもない音を招く。 全体音を調律しながらも、いかなる失敗も容認しない最も危険な楽器がオーボエだ。
最近の米国金融危機を見ながらオーボエが思い浮かんだ。 世界経済は60余年間、米国を中心に動いた。 「小さな政府-大きな市場」や「負債も資産」という基準まで、われ先にと取り入れた。 幸い、オルフェウス室内管弦楽団のように指揮者なしでも無理なく動いてきた。 問題は今回オーボエに事故が生じたことだ。 米国金融がつまずきながら大きな轟音を出している。 老練なオーケストラはこのような時、緊急処方をする。 オーボエを手入れする間、似た音色のイングリッシュホルンがその空白を埋めるのだ。 他の楽器もすぐにその音に合わせる。 いま救済金融を注いでいる米国は故障したオーボエに似ている。 2000億ドルの米国債を購入した中国はイングリッシュホルンを連想させる。 こういう協調が続けば、破局は避けられるという安堵を感じる。 世界経済が破綻する公演の中断は誰にとっても悪夢であるから。
この記事を読んで…