最近のメラミン混入粉ミルク波紋で、中国では母乳授乳ブームが起きているという。 母乳を飲ませられない母親が乳母を求めるケースも増えており、乳母の月給が５０％も跳ね上がったという。 母乳は母親が乳児に与えられる最も大きな贈り物だ。 にもかかわらず、最近の国内の母乳授乳率は３７．４％にとどまっている。 それでも０２年の６．５％に比べるとかなり回復しているという。

母乳は営養素が豊富であるうえ、乳児の免疫力を強化し、アレルギー疾患の予防を助ける。 母乳を飲んで育った子は乳児の突然死や小児肥満の確率も低い。 論争はあるが、母乳を飲んだ子は粉ミルクで育った子に比べて賢い、という研究結果も多い。 妊娠７カ月から分娩後の初週までに出てくる初乳には、脳細胞発達に影響を及ぼすビタミンＡやＤＨＡが含まれているからだという。


このような結果として、２００５年にオーストラリアでは、母乳授乳による経済的効果は年間２２億オーストラリアドルにのぼる、という分析も出てきた。 韓国ウォンにすれば２兆ウォンを超える規模だ。

母乳の授乳にともなう不便は少なくないが、母親にも良い点は多い。 母乳を授乳すれば一日平均５００キロカロリーがさらに消耗され、産後の体重減量に助けになるという。 また母乳を授乳した女性は卵巣がんや乳がん、糖尿病、リウマチの危険が減るという研究結果もある。 今年の夏、デンマーク・コペンハーゲン大学の研究チームは、母親が何を食べるかによって母乳の味が変わる、という研究結果を出した。 母親がバナナを食べれば、わずか１時間以内に母乳にその味が表れるということだ。 逆に考えれば、これは母親が健康を害するものを食べれば、それがそのまま乳児に伝わるという話だ。

レイチェル・カーソンはすでに１９６０年代、有名な著書『沈黙の春』で、母乳から殺虫剤の残留物が検出され、これによって生まれて間もない子に被害が生じる可能性がある、と警告した。 環境が汚染された現代社会で実際に母乳を包装し製品として販売しようとすれば、先進国の食品安全法によって禁止されるという指摘もある。

メラミンでなくとも世の中が汚染されれば母親が汚染され、母親が汚染されれば乳児が病気になるしかない現実だ。 母乳であれ、粉ミルクであれ、乳児を健康に育てることもできなければ、それは健康な社会ではなく、未来がある社会ということもできない。