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【噴水台】連鎖反応

 1996年、世界的な製薬会社アボット社はエイズ治療剤「リトナビル」の米国市販を始める。 2億余ドルを投じて新薬を開発したアボット社は、2年後、予想もできなかった事態に直面する。

イリノイ州の製薬工場で、その時まで知られていなかったリトナビルの多形体(化学的成分は同じだが物理的な構造が異なる結晶)が現れたのだ。 すると、周辺にあった薬の従来の構造が相次いで新型多形体に変わった。 新型には治療効果がなかった。

イタリア工場では新型が見つからなかったが、イリノイの科学者が訪問した後、間もなく同じ現象が起きた。 訪問者の服についていた微細な多形体が種になった。 会社はこの期間中に製造されたすべての製品を市場から回収しなければならなかった。


新しい種が従来の構造を変える連鎖反応はこのように途方もない波及力を持つ。 牛海綿状脳症(BSE)の原因物質である異常プリオンたんぱく質も同じような例だ。 正常プリオンと成分は同じだが、アミノ酸結晶の構造が異なる。 これが脳に入り、周辺の正常プリオンを自身と同じ構造に変えていくのが(人間)BSEの発病メカニズムだ。

連鎖反応は素粒子レベルでも問題になることがある。 ヨーロッパ物理研究所(CERN)が10日に稼働する人類最大の科学実験装置「強粒子加速器」(LHC)と関連した話だ。 陽子を光の速度に加速してお互い衝突させれば莫大な量の素粒子が密集生成される。 この時、物質の基本的な構成要素であるクォークの一つ「ストレンジクォーク」が原子核と安定的に結合する可能性がある。すると新しい物資の「ストレンジレット」(Strangelet)が出現し、自身と接触する原子核を順に変形させ、結局、地球全体をのみ込んでしまうことになる。 英国ケンブリッジ大学の理論物理学者マーティン・リース教授が提起した破局シナリオだ。 幸い、主流科学界では認められていない理論だ。

それよりも強粒子加速器は他の種類の連鎖反応を招くと期待される。 質量の原因になる「ヒッグス粒子」や「超弦理論」が提起する超対称粒子などを見つけるのが加速器実験の目的だ。 このような証拠を見つければ、宇宙と物質の根源についてのわれわれ知識は、まさにその地点から連鎖的に書き直されるはずだ。



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