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京畿道金浦市サムイクスポーツ本社兼工場は「捨てられた工場」か思わせる。低い山のふもとに位置する2階建の建物だが、大雨が降ればすぐでも倒れそうだ。
ここが北京五輪アーチェリー種目で金メダルを産室したという工場というから信じがたい。1990年からこの会社を経営しているイ・ボンジェ社長(写真)さえ「会社が鉄工所みたいではないですか」と話す。しかしイ社長は「国家代表の使う弓はここで自ら制作する」と強調した。
サムイク(サミック)スポーツが知られるようになったのは北京五輪アーチェリー選手128人のうち50人が「SAMICK」ブランドの弓を使っていたことが知られてからだ。女子団体戦に出場したパク・ソンヒョン、ユン・オクヒ、チョ・ヒョンジョン選手がサムイクの弓で金の的を命中させた。男子代表のパク・キョンモ、イム・ドンヒョン選手も同じだ。中国女子個人金メダルリストもこの会社の製品を使っていることから、イ社長に今大会のアーチェリー競技は自ら調えた宴のように感じられそうだ。
年間5億ドルに推定されるアーチェリー市場の盟主はアメリカのホイット(HOYT)社だ。この会社はレジャー用を含む世界のアーチェリー市場を掌握している。ところで選手用となると話は変わる。代表選手用だけを見るとサムイク社のシェアは50%ほどになる。現在、この会社で生産する選手用の弓だけで年間5000本にのぼる。イ社長は「全世界50カ国ほどに輸出しているので、弓の製作会社として韓国は金メダルの価値ではないか」と話した。年間の売り上げは50億ウォン、今にも倒れそうなこの小さな会社がアーチェリー市場を掌握できた秘訣は何だろうか。
この会社の製品の強みは炭素(カーボン)素材を使ったことにある。普通、弓の取っ手はアルミニウムで作るが、サムイクは早くからカーボン素材を取り入れてきた。サムイク社が選手用製品を完成するのにかかった時間は少なくとも10カ月ほど。弓の加工・接着・塗装は普通10日もあれば十分だが、選手たちとフィードバックを通じて製品をアップグレードさせるからだという。
「普通、選手は撃つ力が42パウンド(約19キロ)である製品を使うが、パク・ソンヒョン選手は44.2パウンドのものを求める。こうなると“パク・ソンヒョンアーチェリー”が作られるわけだ」
イ社長が望むのはアーチェリーが生活スポーツとして位置づくことだ。そのため地方によく出張している。「家族揃って楽しめるアーチェリー博物館兼アーチェリー場を作る敷地を探している。アーチェリーがレジャースポーツでも金メダルを取ることができたらいいと思う」
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