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「あなたは表面では笑っているが、個人的には不幸ではないですか?」。カーネマン教授はこの質問をあきらめなければならなかった。 多くの人が突然、大声で泣き出したからだ。 カーネマン教授は数多くの質問を投じたが、主観的な福祉を測定する尺度を考案するには失敗した。
それでも実験の余韻は長く残る。 どれほど多くの人が涙をのんで生きていくのか。
人間はゴリラ・チンパンジー・サル・オランウータンを含むすべての霊長類のうち、泣くことができる唯一の存在だ。 出生直後の最初の呼吸も泣くことで始まる。 この時は涙は出ない。 まだ涙腺が機能していないからだ。 涙は生後4日になると少し出始め、6カ月になれば普通に出る。 それ以後は泣きまくる。 1歳の赤ちゃんは普通1カ月に65回も泣く。
成人になれば私たちはあまり泣かない。 自分がいる状況や社会的な地位、体面をまず考えるからだ。 しかし泣くことは感情が高まれば自然に起こる身体反応であり、何よりも健康によい。 感情的な涙には‘カテコラミン’というストレスホルモンが多く含まれているためだ。 このホルモンが体にたまれば、消化器疾患、心筋梗塞、動脈硬化が生じ、血中コレステロール数値が高まる。
1997年に英国のダイアナ妃が交通事故で死亡した時のことだ。 英国民の多くがテレビで葬儀を見守り、悲しみの涙を流した。 この事件後しばらく英国の心理相談所を訪れる患者数は半分に減ったという。 思う存分泣けば神経が安定し、心も浄化されるカタルシス効果のためだ。 心理学者はこれを‘ダイアナエフェクト’‘ダイアナシンドローム’と呼んだ。
北京五輪の初日の9日、柔道60キロ級で優勝した崔敏浩(チェ・ミンホ)選手は授賞台に立っても涙を抑えられなかった。 これまで体験した辛さが手に余る喜びと入り乱れたのだ。 11日、柔道73キロ級決勝戦で敗れた王己春(ワン・キチュン)選手は退場しながら泣いた。 肋骨負傷の無念、人々の期待を裏切ったという悔恨からだろう。 メダルを獲得したにせよ、惜しくも逃したにせよ、最善を尽くした選手は私たちに感動を与える。 彼らの涙はなおさらそうだ。 今日までどれほど多くの涙をのんで一本道を歩んできただろうか。 選手たちよ、今は涙をこらえずに思い切って泣いてもよいのではないか。 私たちの心まで一緒に浄化するほど…。
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