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【噴水台】K2の悲劇

 世界でいちばん登頂が困難な山はエベレストではない。パキスタン内陸からずっと伸びたカラコラム山脈のK2だ。海抜8611メートルで、世界2位だ。インド洋から遠く離れたカラコルム山脈は非常に乾燥した不毛地帯だ。ここに鋭いピラミッドの形をしたK2は、傾斜からして特別だ。エベレストと違い、連峰より1000~2000メートル高く聳え、悪天候もしょっちゅうだ。山の中腹の巨大な6つの氷河が冷たい空気を抱いて、濃い雲がくるんだ頂上には旋風突風が吹きつける。今までK2を征腹した山岳家は100人余り。それなのに犠牲者だけで50人を上回る。登山死亡率30%と断然、高い。オム・ホンギルは 「この山は命をかけなければ登ることができない」と言った。ここで仲間を失ったパク・ヨンソクは「小さな過ちも決して受け入れない山」と言った。山と人間の死闘を描いた映画『バーティカル・リミット』もK2が背景だ。

スコットランド出身のアリス・ハーグリーブス。1995年K2で33歳の一生を終えた女性登山家だ。アルプスの巨壁をあまねく登攀し、女性としては初めて無酸素でエベレスト単独登頂にも成功している。彼女は別の登山隊が撤収するときも1人残った。そして黒い色のK2を登り始めた。K2頂上から下るとき、北から真っ黒な雲が近付いてきた。時速160キロを超す暴風が半日間吹き荒れた後、彼女は消えた。ハーグリーブスには7歳の息子と4歳の娘がいた。「ママの山が見たい」パパは1カ月後、子供たちの手を握り、ママのそばを訪れた。彼らがベースキャンプに触れた日、K2は久々に奇跡のように姿を現す。「本当に美しい。ママを理解することができる。今になってみるとわかる気がする…」<『ママの最後の山 K2』、ジェイムズ・バラード>

おととい、K2で韓国人登山家3人が死亡した。巨大な氷壁が崩れ、固定ロープとザイルまでいっぺんに吹き飛んだ。K2から下って韓国人3人が死亡した86年の悪夢が再現された。しかし、若い山岳家は今日も命をかけて山に登る。パク・ポムシンの小説『チョラツェ』で、ざっとその理由を探れるか。主人公の兄弟はクレバスや険しい山をくぐってついにエベレストの隣の チョラツェ頂上に登る。濃い霧に包まれ、見えるのは一面ぼやけた世の中だけだ。それでもヒマラヤにすっかりはまったパク・ボムシンは問い返す。「若い人々が夢と命運を全部投げ打ってみるに値する理想のない世の中、そんな一生は寂しい。誰も心の中にチョラツェひとつくらい抱いて生きていかなければならないじゃないのか」

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