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フントウィッツとラヴェッツは20世紀後半、ノーマルサイエンスだけでは限界に逢着し、ポスト・ノーマルサイエンス(post-normal science)の段階に入ったと主張した。「事実は不確実になり、価値は論争に包まれて、その余波は大きく、判断は至急な」状況に適用される科学だ。クローン人間、遺伝子組み換え食品、核廃棄物処理場のように不確実性と危険性が高く、社会的合意の重要な事案がこれに当たる。
ポスト・ノーマルサイエンスの大きな特徴は、科学の主体が科学専門家共同体から市民と利害集団を含む“拡張された共同体”に変わるということだ。科学的事実も伝統的実験結果だけではなく、住民の経験と知識、言論の深層報道を含んだ“拡張された事実”に変わる。科学者の活動もただ実験室に限らず、政治的妥協と対話、説得を含むものに変わる。
ポスト・ノーマルサイエンスは、一言で実験室の外に歩み出た科学だ。政策決定のために社会的公論場に行った科学ともいえる。科学の民主化やウーリッヒ・ベックが言った「省察的科学」とも重なる。米国物理学者アルビン・ワインバーグは1970年代初め、すでに「トランス科学(trans-science)」という用語を使ったことがある。「科学的に敍述は可能だが、その答えは科学によって見つけることのできない技術社会的問題」という意味だ。
科学史学者ホン・ソンウクは「ポスト・ノーマルサイエンスのパラダイムでは専門家たちが安全だと結論を下したから住民は信じて従わなければならないということでは技術的危険の問題を解決することができない」とし「政府と専門家たちは大衆に情報を提供して説得するという一方的模型を捨てなさい」と注文した(『ホン・ソンウクの科学エッセイ』)」ポスト・ノーマルサイエンスの時期のコミュニケーションは真の意味の双方疎通。大衆の観点を感情的や主観的なものと見做してはならず、唯一の解決策は「拡張された共同体」によって合意された一連の段階をゆっくり踏んでいくこと」とも書いた。
彼の言葉は最近、狂牛病政局で政府と一部の科学者が科学的説得がどうしてそのように大衆に無力だったのか、についての答えの糸口を与える。ポスト・ノーマルサイエンス時代、専門家主義と一方的押しつけ、速度戦は百戦百敗という話だ。
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