|
『スーパーサイズミー』がファストフードと健康の問題を扱えば、来月国内公開される『ファーストフードネイション』(FastFoodNation、2006)は、ファストフード産業そのものを掘り下げる。ファーストフードネイションというタイトルからしてファストフードが支配する米国、ひいては現代社会に対する隠喩に見えるほどだ。原作は記者出身であるエリック・シュローサーのノンフィクションだ。『ビフォア・サンセット』のリチャード・リンクレイター監督がメガホンを取った。原作が2年間、ニューヨークタイムスベストセラーリストを守ったのに続き、映画は2006年カンヌ映画祭黄金奨励賞候補に上がった。監督のペルソナ(映画的分身)であるイーサン・ホークに続き、筋肉質男ブルース・ウィリス、反抗児ロッカー、アヴリル・ラヴィーンのサプライズ出演が話題になった。
映画は仮想の会社「ミッキーズ」と仮想都市「コーディ」を背景にする。ミッキーズバーガーに異物が入ったといううわさが流れるとマーケティング幹部がコーディに急遽派遣される。牛肉パティを納品する工場と大型牧場がある所だ。現場調査中の彼の目を追って映画は、牛の処分とパティ生産工程について行く。大部分メキシコ不法滞在者である工場勤労者たちが、アメリカンドリームを夢みたが、挫折する姿も一緒に見せてくれる。1ドルにもならないハンバーガーが可能か、また環境活動家たちの夢想はどれほど力無いかも見せてくれる。
ファーストフードネイションは最近ホットイシューに浮上中の牛肉産業に対する考察でもある。牧場から食卓まで牛の一生に対する報告書ともいえる。後半部、牛の処分の場面はとてもリアルだが、菜食主義者である監督は撮影に集中しにくかったという裏話だ。
煽動的に見えるほど過度な善悪二分法が気にはかかるが、映画は食べ物の問題が現代社会の主なイッシューの要因となって浮び上がっていることを鮮明に見せてくれる。政治・社会・環境・階層葛藤の核心として食べ物問題だ。ウルリヒ・ベック氏の言葉通り「いちばん日常的な問題がいちばん政治的な問題になる危険社会」の到来を明らかに示しているわけだ。実際にも我々は最近、狂牛病(BSE)問題以後、安全な食べ物を求める消費者世帯のエンゲル係数が恐ろしく高くなる事例を目撃している。
何を食べるか、あるいはあなたの食卓はどのくらい安全なのか、あなたが誰なのか、あなたの社会的位置と政治的立場を決める時代になったのだ。
この記事を読んで…