「走る」それ自体が躍動を生む。特殊効果がなくても、人物や画面をダイナミックにさせるため、監督は俳優が走る姿を撮るのが面白いのかもしれない。

誰よりも走る姿が美しい女優がここにいる。それはキム・ソナだ。キム・ソナは女優として珍しいキャラクターの持ち主だ。大変だと不満を言っても、勝てないふりをして走り、また走るのがキム・ソナだ。キム・ソナの説明によると、キム・ソナは皮肉なことに毎作品走っているという。そして、走れば走るほどうまくなる。


最初の話題作となった映画『夢精期』（２００２年）は弾けるように走った。映画『偉大な遺産』（２００３年）はイム・チャンジョンとセットで追って追われることが多かった。映画『潜伏勤務』（２００５年）は走ることが宿命の暴力団担当女性刑事を演じた。ポスターを見ていると、キム・ソナが今にも飛び出してきそうだ。

今回は難関を物ともせず、久し振りの映画『ガールスカウト』でも死ぬほど走った。掛け金を持ち逃げした人物を捕まえる役のため、またしても走ることが宿命となった。

「監督は自分を見ると、走らせたくなるらしいんです。撮影の間じゅう車と一緒によく走りました。多分、自分を車と勘違いしていたのでは…」

走りすぎて、一足しかない運動靴に穴が空いた。撮影終盤にはステディカム（持ちながら撮るカメラ）監督が首を横に振った。「頼むからゆっくりやろう」と。

訴訟に、デマに、大変だったキム・ソナ。今回の作品がキム・ソナの演技のターニングポイントとなるという思いで走る準備を終えた。