◆ＩＴ・医療は強いが、デジタル医療サービスは弱い韓国

産業界は「ＩＴ」と「保健医療産業」が強い韓国がその２つを融合したデジタル医療サービス市場をすべて奪われていると懸念している。経済協力開発機構（ＯＥＣＤ）３８カ国のうち韓国を含む６カ国（チリ、エストニア、チェコ、スイス、トルコ）以外の国では非対面診療、薬の配送などが可能だ。関連市場も急速に成長している。市場調査会社プレシダンスリサーチによると、今年の世界非対面診療市場は１５８５億ドル（約２３兆７７００億円）規模で、２０３２年には８９３７億ドルに成長する見込みだ。

日本は１９９７年に非対面診療（遠隔診療）関連法律を作り、２０１５年に一定条件下で非対面初診を許容した。その後は徐々に拡大し、２０２２年１月には事実上全面許容した。特に日本は医師が非対面診療が可能と判断する場合や診療前に相談をした場合には許容する形で運営する。半面、韓国は昨年６月、初診非対面医療可能範囲を政府が発表し、島・僻地居住患者、体が不自由な人、感染病確定患者に制限するなど画一的な基準を適用した。「事実上の不許可」だ。


フランスは対面診療を１年間受けた履歴がある再診患者に限り主治医の依頼を通じて非対面診療を許容し、２０２０年からは主治医の依頼や診療記録がない初診にまで対象を広げた。英国は２０１９年に「モバイルプラットホーム（ＮＨＳ）長期計画」を立てて非対面診療を徐々に拡大している。すべての１次病院をＮＨＳアプリと連動させ、患者は本人の診療記録を閲覧したり長期服用薬の処方箋を受けたりすることができる。

◆「デジタル医療政策に一貫性必要」

保健医療学界と産業界は政策の一貫性が必要だと主張している。ソウル大公共診療センターのクォン・ヨンジン教授は「韓国では現在、デジタル医療が非対面診療という枠にはめられているが、これを包括するデジタル医療関連法が用意されるべきだ」と助言した。法案を準備する過程で医療界の懸念も反映しながらデジタル医療サービスを制度化する必要があるということだ。

ソウル大保健大学院のクォン・スンマン教授は「政策決定過程で患者の観点よりも利害集団の観点が重視されるようで残念だ」とし「政府が非対面診療サービスの有用性と安定性を十分に保障し、供給者も国民も受け入れられるほどの十分な広報と説得を通して現状況を乗り越える必要がある」と話した。


規制で９０００億ドル市場奪われるのか…非対面診療アプリが「脱韓国ラッシュ」（１）