◆民間人被害による否定的影響

民間人の被害を最小化する軍事作戦は道徳的当為であると同時に戦略的必要によるものでもある。民間人の被害増加で戦争に対する国内・国際社会の支持が減れば、戦争を続ける能力と名分が弱まる。ウクライナが多くの国から変わりない支持を受けて戦争を持続できる理由の一つは、ロシアの民間人に被害を与えないからだ。

また罪のない人たちの被害が増えることになれば、無念の死を目撃した周囲の人たちの抵抗意志を強める。これは敵対勢力の規模を拡大させる逆効果をもたらす。米国はテロとの戦争過程でイラク、アフガニスタン、そしてシリアの多くの民間人に被害を与え、家族の命と生活の基盤を失った民間人は武装団体に容易に抱き込まれた。


民間人の被害緩和を重視しながらも徹底しない場合、敵はこうした弱点を利用する可能性がある。１７日にガザ地区の病院が爆撃されて約５００人が死亡したが、イスラエルはこうした戦争犯罪に責任がないという点を積極的に釈明しなければならなかった。ハマスやイスラミック・ジハードの意図的な行為なのか、誤爆なのかは確認できないが、イスラエルのテンポを遅らせるのに大きく寄与した。

◆民間人被害緩和のための分別力向上が必要

昨年８月、米国防総省は過去数年間の米軍の作戦による民間人死傷者数が多かった点を反省し、これを改善しようと「民間人被害緩和および対応実行計画（ＣＨＭＲ－ＡＰ）」を発表した。計画では民間人の被害を緩和することが戦場での長期的成功に決定的だという点を強調しながら、リーダーシップ・組織・人員・戦略・教理および訓練・作戦力量など全領域にわたり民間人の被害を減らす接近方式を追求するよう１１件の課題を樹立した。

また今年新しく改正した通常兵器移転政策（Ｃｏｎｖｅｎｔｉｏｎａｌ　Ａｒｍｓ　Ｔｒａｎｓｆｅｒ　Ｐｏｌｉｃｙ）は、米国の武器で民間人に被害を与える国に対する武器の移転を中断できるよう定めている。

現在、韓国軍でも一部の武器体系発展の考慮要素の一つに民間人被害最小化を含め、民間人被害の程度を評価する自体能力を備えるなどの努力が行われている。しかし北朝鮮軍との交戦に対応しているだけに、より一層の全般的レベルの努力が要求される。

『２０２２年国防白書』で指摘したように我々の敵は北朝鮮政権と北朝鮮軍だ。そして憲法上、北朝鮮住民はわが国の国民だ。北朝鮮の領土で最も人口が多い平壌（ピョンヤン）に政権首脳部が集結し、交戦発生時に北朝鮮軍は平壌を集中的に守ろうとするだろう。北朝鮮政権もハマスのように子どもや女性が多い地域に指導部の隠れ場所を置き、北朝鮮住民を盾とする可能性がある。また、我々による民間人の被害を誇張して政治的扇動の道具にするはずだ。

難しい決定の前にためらわないよう、戦争中に敵が仕掛けた罠にはまらないよう、我々の戦略・教理・規則・訓練・武器体系がより高い分別力を備えるための努力が求められる。

チョン・ギョンジュ／韓国国防研究院研究委員


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