自動車衝突テストは走る自動車を壁にぶつける。このように一定の速度で走る運動量をモメンタム(momentum)というが、停止すればモメンタムがゼロになる。モメンタムがゼロになればその運動量が衝撃量に変わる。車がつぶれて助手席の実験人形「ダミー」が窓を突き抜けて外に飛ばされる。韓国経済も新型コロナ事態以降、持続的に成長してきたエンジンのモメンタムが急速に消えている。
韓国では産業化以降これまで人口が増加し、所得も増えた。金利も1990年以降は下落し、債券の価値が上昇した。すべてのものが増加する慣性の中に暮らしてきた。しかしもうこれが停止するとみられる。モメンタムが消えるということだ。モメンタムが消えれば衝撃を受ける。さらに時間が過ぎれば、金利がまた上がり、1人あたりの所得が減少し、人口が減少するマイナスモメンタムになり得る。この問題を主要経済変数の金利・所得・人口を中心に見てみよう。
最近、ゼロ金利という言葉をよく聞く。国債3年満期の利回りも定期預金の金利も今年に入って0%台に入ったからだ。ここで「ゼロ」という言葉に留意する必要がある。金利にマイナスがないとすればゼロ金利は金利が最も低いということだが、これは金利がこれ以上下がる余地がないという意味でもある。欧州で見られるように金利がマイナスのどこまでいくか分からないという人もいるが、その可能性は大きくない。
さらなる金利低下の可能性が難しくなり、金利モメンタムはほとんどゼロになった。3年満期国債の利回りが現在の0.8%程度からさらに下がっても0.8ポイントがすべてだ。2000年に9%だった国債の利回りがさらに下落する余地はほとんど消えた。金利の低下は利子費用の減少、資産価格の上昇などを通じて景気を活性化させる役割をするが、この手段がなくなるということだ。この場合、慣性的に持っていた観点を疑い、ゼロ金利で世の中がどうなるかを見なければいけない。
不動産が一つの例だ。マンション価格の動きは金利と密接な関係がある。2000年序盤から金利が下落し、韓国のマンション価格が持続的に上がっている。しかし今後の金利下落の可能性が高くない場合、マンション価格上昇に影響を与えた要因が一つが消える。短期的にはゼロ金利のメリットを感じるだろうが、時間が過ぎるほど追加で上昇させるほどの動力が低下する。
◆低金利で負債が膨らんでいく時代
負債を通じた成長にも制約がくる。貸出金利が4%から2%に下落すれば元金を2倍借りても利子の金額が同じだ。同じ元金なら利子が以前の半分水準に減る。1億ウォンを借りた人は利子が年400万ウォンから200万ウォンに減ったり、または1億ウォンを追加で借りても利子の金額が同じだ。しかし金利が追加で下落しにくい状況でお金をさらに借りれば利子が増える。通貨政策という手段の一つが無力化する。資金供給を続ける量的緩和政策があるが、基軸通貨を持たない国には負担になる。
個人の所得も増えにくい。個人所得の停滞は魚雷のように表面には表れないが、経済と社会全般に大きな影響を与える。韓国は通貨危機を経験しながらも、2000年に1人あたりの所得が1万ドル、2010年に2万ドル、2020年に3万ドルと成長してきた。1990年代まで個人所得は台湾を下回っていたが、2003年に追い越した。日本の1970-80年代に見られた雰囲気だった。
しかし今後は個人所得の増加が停滞する見込みだ。製造業の後発追撃者を抑えて先進国と競争しなければならないうえ、全体人口のうち生産可能人口の比率が減少するからだ。日本は90年代半ばに個人所得が4万ドルを超えたが、25年が過ぎた今でも3万ドル後半にとどまっている。イタリアも現在の個人所得は15年前の水準だ。製造業国家が経験する3万ドルの壁だ。
韓国は所得が急成長し、消費市場も大きく変わった。新築の高価な住宅を求めるようになった理由でもある。日本が所得3万ドルを超えた90年代初めにはニューリッチ(New Rich)が新たな消費の主体として登場した。ニューリッチを羨望する大衆のための高級消費財も流行した。しかし所得が停滞すると、100円ショップ産業が急成長した。所得増加がゼロモメンタムに入り、日本の消費市場と住宅市場は急変した。韓国も20年間にわたり所得が急成長した記憶が残っていて、世の中はこの速度でずっと変わるものと期待する。しかしゼロモメンタムはこうした期待とは全く違う世の中を見せる。
【コラム】人口・所得・金利ともに停滞する時がくる=韓国(2)
韓国では産業化以降これまで人口が増加し、所得も増えた。金利も1990年以降は下落し、債券の価値が上昇した。すべてのものが増加する慣性の中に暮らしてきた。しかしもうこれが停止するとみられる。モメンタムが消えるということだ。モメンタムが消えれば衝撃を受ける。さらに時間が過ぎれば、金利がまた上がり、1人あたりの所得が減少し、人口が減少するマイナスモメンタムになり得る。この問題を主要経済変数の金利・所得・人口を中心に見てみよう。
最近、ゼロ金利という言葉をよく聞く。国債3年満期の利回りも定期預金の金利も今年に入って0%台に入ったからだ。ここで「ゼロ」という言葉に留意する必要がある。金利にマイナスがないとすればゼロ金利は金利が最も低いということだが、これは金利がこれ以上下がる余地がないという意味でもある。欧州で見られるように金利がマイナスのどこまでいくか分からないという人もいるが、その可能性は大きくない。
さらなる金利低下の可能性が難しくなり、金利モメンタムはほとんどゼロになった。3年満期国債の利回りが現在の0.8%程度からさらに下がっても0.8ポイントがすべてだ。2000年に9%だった国債の利回りがさらに下落する余地はほとんど消えた。金利の低下は利子費用の減少、資産価格の上昇などを通じて景気を活性化させる役割をするが、この手段がなくなるということだ。この場合、慣性的に持っていた観点を疑い、ゼロ金利で世の中がどうなるかを見なければいけない。
不動産が一つの例だ。マンション価格の動きは金利と密接な関係がある。2000年序盤から金利が下落し、韓国のマンション価格が持続的に上がっている。しかし今後の金利下落の可能性が高くない場合、マンション価格上昇に影響を与えた要因が一つが消える。短期的にはゼロ金利のメリットを感じるだろうが、時間が過ぎるほど追加で上昇させるほどの動力が低下する。
◆低金利で負債が膨らんでいく時代
負債を通じた成長にも制約がくる。貸出金利が4%から2%に下落すれば元金を2倍借りても利子の金額が同じだ。同じ元金なら利子が以前の半分水準に減る。1億ウォンを借りた人は利子が年400万ウォンから200万ウォンに減ったり、または1億ウォンを追加で借りても利子の金額が同じだ。しかし金利が追加で下落しにくい状況でお金をさらに借りれば利子が増える。通貨政策という手段の一つが無力化する。資金供給を続ける量的緩和政策があるが、基軸通貨を持たない国には負担になる。
個人の所得も増えにくい。個人所得の停滞は魚雷のように表面には表れないが、経済と社会全般に大きな影響を与える。韓国は通貨危機を経験しながらも、2000年に1人あたりの所得が1万ドル、2010年に2万ドル、2020年に3万ドルと成長してきた。1990年代まで個人所得は台湾を下回っていたが、2003年に追い越した。日本の1970-80年代に見られた雰囲気だった。
しかし今後は個人所得の増加が停滞する見込みだ。製造業の後発追撃者を抑えて先進国と競争しなければならないうえ、全体人口のうち生産可能人口の比率が減少するからだ。日本は90年代半ばに個人所得が4万ドルを超えたが、25年が過ぎた今でも3万ドル後半にとどまっている。イタリアも現在の個人所得は15年前の水準だ。製造業国家が経験する3万ドルの壁だ。
韓国は所得が急成長し、消費市場も大きく変わった。新築の高価な住宅を求めるようになった理由でもある。日本が所得3万ドルを超えた90年代初めにはニューリッチ(New Rich)が新たな消費の主体として登場した。ニューリッチを羨望する大衆のための高級消費財も流行した。しかし所得が停滞すると、100円ショップ産業が急成長した。所得増加がゼロモメンタムに入り、日本の消費市場と住宅市場は急変した。韓国も20年間にわたり所得が急成長した記憶が残っていて、世の中はこの速度でずっと変わるものと期待する。しかしゼロモメンタムはこうした期待とは全く違う世の中を見せる。
【コラム】人口・所得・金利ともに停滞する時がくる=韓国(2)
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