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<Mr.ミリタリー>「民主国家北朝鮮」の期待に挑発の懸念も混じる金正恩異変説(1)

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(左)と妹の金与正(キム・ヨジョン)労働党第1副部長

独裁者の終末は悲惨だった。ヒトラーは1945年4月30日、旧ソ連軍が独ベルリンに進入すると、バンカーで「私の遺体を完全に燃やしてほしい」という遺書を残して命を絶った。イタリアの独裁者ムッソリーニはローマを脱出したが、市民に捕まって処刑された。2011年の「アラブの春」革命でチュニジア・エジプト・リビアの独裁者が退いた。絶対権力者は市民のデモで力なく崩れた。昨年もアルジェリアとスーダンの独裁者が市民の抵抗で退いた。峨山政策研究院のチャン・ジヒャン中東センター長は「暴圧政治と腐敗、貧困は独裁政権の弱点だが、没落の決定的な理由ではない」とし「独裁政権は非常に偶発的な事件で世論掌握力を失う瞬間、危機が始まる」と述べた。しかし独裁政権の崩壊は内戦と大量の難民ももたらす。

チャン・ジヒャン氏がいう「偶発的事件」は独裁国家の北朝鮮でも起こるのだろうか。最近、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の異変説が出ている。ところが金委員長の異変説に対する政府とメディアの見方は異なる。金委員長が「心血管手術で脳死状態になった」「倒れて死亡した」から「健在」までさまざまだ。金委員長の専用列車が元山(ウォンサン)に長期間停車し、妹の金与正(キム・ヨジョン)労働党副部長と崔竜海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員長など北朝鮮指導部がメディアから消えた。韓国の金錬鉄(キム・ヨンチョル)統一部長官は28日、「北に特異な動向はない」と明らかにした。文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一・外交・安保特別補佐官も「(金委員長は)健在だ」と述べた。軍情報当局も昨日、「(金委員長は)正常に国政運営をしている」という立場だ。これに関連し、多数の情報関係者は金正恩委員長に関する情報はないという。

海外メディアの報道も異なる。ワシントンポスト(WP)は「金正恩死亡説で北朝鮮が混乱し、買い占めが激しい」と報じた。ロシアのタス通信は「平壌(ピョンヤン)住民は普段と変わらず、大同江の岸では歌が流れていた」とし、WPとは正反対の記事を載せた。トランプ米大統領は一昨日、ホワイトハウスでの記者会見で「今は彼(金正恩委員長)が健康であることを望む。無事であることを望む」と発言した。トランプ大統領のニュアンスはやや異なる。「無事であることを望む」という発言は、金正恩委員長の健康に問題があるという意味として聞こえる。中国は25日、金委員長への助言を名分に医療関係者など代表団を北朝鮮に派遣したという。北朝鮮の状況を把握する目的とみられる。総合すると、金委員長との利害関係によって金正恩異変説に対する判断が異なる。


◆独裁から民主主義に転換?

今回の北朝鮮の状況を見る多くの人々は、独裁体制の変化への期待と同時に、急変事態への不安感も抱いている。独裁を好む人は独裁者とその周囲の権力者だ。ジョン・スチュアート・ミルの『自由論』に言及するまでもなく、すべての人間の基本目標は他人から抑圧されず自由と幸せを享受することだ。現代社会で国家とは個人の自由を保障するための垣であり、政府はその行為者となる。しかし北朝鮮は3代世襲独裁国家だ。その3代が70年間ほど北朝鮮住民の自由と幸福のためだったと信じる人はどれほどいるだろうか。独裁国家は独裁者を頂点にした権力の食物連鎖構造だ。独裁者の利己心を満たすためにエリートが上を支え、住民には不当な圧力を行使して自身の腹を満たす。したがって北朝鮮の権力が変わるのなら、独裁から民主主義に転換し、この機会に北核の解決と同時に平和定着と統一につながることを望む人がほとんどだろう。

では、金委員長の状態をどう見るべきだろうか。チョ・ボグン元国防情報本部長は「金正恩委員長に異変があったようだ」と述べた。チョ氏は「いくつかの状況から見て、健康不安説が80-90%」と推定した。長い経験からの直感だ。その理由にまず、北朝鮮の無対応を挙げた。北朝鮮は最高統治者の身辺に関する報道が出てから半月以上も対応していない。金委員長が執権後、宣伝扇動のために自身の映像を絶えず送り出してきたこれまでの状況とは全く違う。

2つ目は普段から健康が良くない金委員長が対北朝鮮制裁と新型コロナ事態が重なってストレスが深刻だったという推定だ。3つ目は、北朝鮮が最近、金与正副部長の名義で青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)を非難するなど彼女が突然メディアに登場したという点だ。一般的に独裁国家ではナンバー2を育てない。金副部長の浮上は後継構図シナリオという推定だ。最後に北朝鮮が総選挙を控えてむやみにミサイルを発射した点だ。金委員長が正常な時に終えようという意図とみられる。


<Mr.ミリタリー>「民主国家北朝鮮」の期待に挑発の懸念も混じる金正恩異変説(2)

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