韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領と中国の習近平国家主席の初対面は、韓中関係回復のシグナルと受け止められている。[写真 聯合ニュース]
もちろん中国は「報復」という言葉そのものを使わない。中国式表現によれば「対応」であり、韓国が言うような報復措置を取ったことはないと主張する。しかし、それを素直に信じる人などいない。現実にその「報復」は存在しているからだ。
2016年のTHAAD事態以降、韓中関係は大きな荒波を経験した。まず、中国に進出していた多くの韓国企業が途方もない苦痛を受けた。その後の中国の報復は大きく分けて2つだった。韓流の中国進出を制限する「限韓令」と、中国人団体による韓国観光を禁止する「禁韓令」だ。禁韓令は2年前に解除されたが、限韓令はいまだに健在だ。韓国のドラマや映画、コンサートなど、ほとんどすべてが中国では依然として許可されていない状態だ。
韓国が機会あるごとに習主席の訪韓を求めてきたのは、まさにこの限韓令の解除のためだった。韓国は、この報復が習主席の主導下で行われたと考えている。韓国社会で「中国」という国そのものよりも習主席に対する好感度がさらに低いという世論調査の結果が出ているのもそのためだ。だからこそ、「結者解之(結んだ者が解かなければならない)」の言葉どおり、習主席が韓国に来てこそこの問題が解決できると信じている。一部では、限韓令の解除は容易ではないという見方もある。
中国指導部の一部は、韓流そのものを快く思っていないという。韓流スターの派手な外見が気に入らず、中国の青年たちの健全な社会主義精神を損なう恐れがあると考えている。しかし、これは口実に近い。もしそうした懸念があるなら、中国独自の審査を通してふるいにかければ済む話だ。したがって、実際は中国の文化産業を守るために韓流を遮断しているのではないかという解釈もある。だが文化産業というものは、むしろ激しい競争の中でこそ成長するものだ。
約10年にわたる「限韓令」という障害物を除去するためには、習主席の決断が最も重要だ。今回の習主席訪韓で、その限韓令が解除される兆しが見えたことは歓迎すべきことだ。11月1日の韓中首脳晩餐会で、李在明(イ・ジェミョン)大統領と習主席、そしてパク・ジニョン大衆文化交流委員長が短く言葉を交わす中で、北京で大規模公演を行おうという提案があり、それに習主席が応じて王毅外交部長を呼んで指示を出したという。もしこれが実現すれば、限韓令解除と受け止められるだろう。
現在、Kカルチャーがまともに流通することができない国は、地球上で中国と北朝鮮の2カ国だけではないだろうか。韓中関係の回復は、限韓令の解除から始まるべきだ。
ユ・サンチョル/中国研究所長・チャイナラボ代表
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