5月30日、ソウル中区の新羅ホテルで開催された2025サムスン湖巌賞授賞式に出席した李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子会長 [聯合ニュース]
今回の事件は罪より人を標的とする韓国式特殊捜査の問題点を赤裸々に表した。検察の捜査・起訴の責任者だった当時の李卜鉉(イ・ボクヒョン)ソウル中央地検部長検事(元金融監督院長)はサムスングループ系列会社を含む53カ所を家宅捜索し、役職員など約300人を調査した。当時は尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領は検察総長であり、韓東勲(ハン・ドンフン)元法務部長官もソウル中央地検第3次長検事として指揮ラインにいた。2020年に外部の専門家が参加した検察捜査審議委員会が不起訴を勧告したが、検察は19件もの容疑を付けて起訴を強行した。1、2審で容疑すべてに無罪が言い渡されると、検察は反省して上告を放棄するべきだという世論が形成されたが、検察は機械的上告を選択し、最終審まで完敗した。
その間、サムスンは「失われた9年」に耐えなければならなかった。人工知能(AI)半導体市場の核心である高帯域幅メモリー(HBM)競争で劣勢になり、ファウンドリー(半導体委託生産)の赤字幅は増えた。過去9年間にサムスン電子の時価総額は49%上がったが、同じ期間、米エヌビディアは7168%、台湾TSMCは746%など半導体ライバル企業の時価総額は急成長した。サムスンの不振には半導体産業の変化についていけなかった点が大きいが、司法リスクによるリーダーシップの空白も影響があった。
司法リスクで経営が揺らいだのはサムスンだけでない。コーロングループも科学技術に無理に司法的基準を突きつけた検察の起訴万能主義で相当な苦労をした。1審ではあるが、李雄烈(イ・ウンヨル)コーロングループ名誉会長ら経営陣は骨関節炎遺伝子治療剤成分をだまして政府の許可を受けた疑いで起訴されてから4年4カ月後の2024年11月に無罪判決を受けた。韓国の検察と食品医薬品安全処はコーロンを司法リスクに追い込んだが、米食品医薬品局(FDA)は十分な科学的検討後に臨床の再開を承認した。今後、黄色い封筒法など企業を押さえつける司法リスクがさらに強まる雰囲気だ。企業が耐えられる合理的なラインを越えてはならない。
サムスンは今回の判決を新しい飛躍の契機にしなければいけない。李会長は2審無罪宣告後の3月、役職員に「死即生(死を覚悟してこそ生きる)」の覚悟を注文した。果敢なM&A(企業の合併・買収)と投資、事業調整で新しい成長事業を育成し、「ニューサムスン」の姿を見せることを願う。もう総帥が裁判に振り回される司法リスクもない。李会長とサムスンの本当の実力を見せることだけが残っている。
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