米国カリフォルニア州シリコンバレーに位置するクーパン(Coupang)のマウンテンビューオフィス。[写真 クーパン]
韓国物流・流通大手のクーパン(Coupang)が人工知能(AI)クラウド市場に本格的に参入する。Eコマース企業から世界最大の情報技術(IT)企業へと成長したアマゾン(Amazon)の道をそっくりそのまま踏襲する形だ。物流・流通の現場で蓄積したデータ処理能力を基盤に、ITプラットフォーム企業へと飛躍するという目標と読める。だが、既存のクラウドサービス事業者が市場をすでに先取りしている状況のため、クーパンの挑戦が容易ではないという見方も出ている。
17日、業界によると、クーパンは最近米国やインドなどでAI・クラウド・ビッグデータ分野の専門家の採用を拡大している。韓国内でもAIクラウド関連のエンジニアを募集している。求人広告には「AWS(Amazon Web Services)ベースのクラウドコンピューティング経験者を優遇」と明示されている。
これに先立ち今月2日には、AIベースのクラウドサービスを「クーパン・インテリジェント・クラウド(CIC)」としてリブランディングし、新たなロゴを公開した。
これまで内部サービスや外部の研究機関、スタートアップなどに提供してきたAIインフラを拡張し、独立した事業としてクラウドサービスを育成するのが目的だ。
流通・物流からコンテンツ、クラウドまでを網羅する事業拡張の手法は、アマゾンとそっくりだ。これまでアマゾンのフルフィルメント(統合物流)サービスなどを取り入れて成長してきたクーパンは、AWSのようにクラウド事業を新たな収益源とする見通しだ。AWSはアマゾン全体の営業利益の半分以上を占める中核事業である。
クーパンが掲げる強みは、首都圏に位置する大規模データセンターの存在だ。クーパン側は「大容量の電力確保や物理的なセキュリティ体制などを完備しており、安定的な運営が可能だ」とし「最終ユーザーとの物理的距離が短いため、サービス遅延を最小化できる」と説明している。
クーパンは当面、韓国内の研究機関やスタートアップを対象としたクラウド事業を強化する計画だ。このために先月、韓国政府が公募した「GPU確保・構築・運用支援事業」に応募した。ネイバー(NAVER)、カカオ(Kakao)、NHHなど国内の主要クラウド企業が申請した1兆5000億ウォン(約1600億円)規模の事業だ。選定されれば、1万個規模のGPUを確保し、AI研究開発などに使用できる。
淑明(スンミョン)女子大学グローバル融合学部のムン・ヒョンナム教授は「既存の国内クラウドサービス提供者(CSP)と異なり、クーパンはコマースを基盤としたAIデータ能力という武器を持っている」とし「今後、民間市場に素早く浸透できる潜在力を持っていると言える」と説明した。続けて「クーパンはコリアスタートアップフォーラムと手を組み、スタートアップ向けクラウド割引や共同AIソリューションの開発などに取り組んでおり、これはAWSが設立初期にAIスタートアップを攻略した戦略と似ている」と付け加えた。
一方、クーパンが流通と物流分野で短期間に成果を上げた一方で、クラウドでは簡単にはいかないだろうという見通しも出ている。既存の事業者がすでに市場を掌握しているためだ。
市場調査会社カナリスによると、昨年10-12月期基準で世界のクラウドインフラ市場シェアは、AWSが33%、マイクロソフト(MS)が24%、グーグル(Google)クラウドが11%の順だった。韓国内ではAWSのシェアが60%を超えているとされている。
漢陽(ハニャン)大学経営学科のシン・ミンス教授は「クーパンのクラウド事業がアマゾンのように成功するためには、追加のデータセンター構築などに莫大な資金を投入しなければならない」とし「先行企業より優位に立つには価格競争力も備える必要があるため、収益を上げるまでには相当な時間がかかるだろう」と予測した。
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