西海（黄海）で韓国の公務員が北朝鮮により射殺された事件と関連した監査院の書面調査通知に文在寅（ムン・ジェイン）前大統領が「非常に無礼なこと」という激高した反応を出した。野党「共に民主党」は文前大統領の「決死擁護」に出る態勢だ。これに対し与党「国民の力」は、「前大統領だからと聖域はありえない」として監査院の調査に応じることを促した。与野党の強力対峙政局がさらに激しさを増している。

文在寅政権時代に青瓦台（チョンワデ、大統領府）国政企画状況室長を務めた民主党の尹建栄（ユン・ゴンヨン）議員は３日の記者会見で「９月３０日に文前大統領に監査院の書面調査に関連した報告を差し上げた。文前大統領は『監査院の書面調査要求は非常に無礼なことだ』という話をした」と伝えた。

尹議員によると、先月２８日に監査院は文前大統領秘書室に電話で書面調査を要請した。これに対し秘書室は質問書の受け取り拒否の意思を明らかにした。監査院は改めて書面調査に応じるよう求める電子メールを秘書室に送り、秘書室は先月３０日に「返送の意味で、送られた方に再びお返しします」という内容で電子メールを送った。


民主党の李在明（イ・ジェミョン）代表は尹錫悦（ユン・ソクヨル）政権を狙って「国民が任せた権力で民生を取りまとめるのではなく、野党を弾圧して前政権に政治報復を加えることに注力している。国民の前で謙虚になるよう願う」と話した。民主党の「尹錫悦政権政治弾圧対策委員会」は国会記者会見を通じ「尹大統領は監査院の刃先を前大統領に向けて政界を政争のるつぼに追いやるという心算なのだろう」と批判した。

◇遺族「質問書送付がなぜ無礼か」、監査院「盧泰愚・金泳三はは答えた」

対策委は崔載海（チェ・ジェヘ）監査院長、柳炳浩（ユ・ビョンホ）事務総長を職権乱用容疑で高位公職者犯罪捜査処に告発することを検討している。民主党は監査院の特別監査時に国会承認を義務化する監査院法改正案も推進する。

監査院が送ろうとした質問書には公務員襲撃事件関連の文前大統領への報告経緯とその後の指示内容などに対する質問が盛り込まれたという。監査院はこの日報道参考資料を出し「事実関係確認が必要で先月２８日に監査院長の決裁を受けて質問書を作成し、伝達方法を模索しているところだった」とした。監査院はまた、過去に盧泰愚（ノ・テウ）、金泳三（キム・ヨンサム）、李明博（イ・ミョンバク）、朴槿恵（パク・クネ）元大統領に監査関連質問紙を伝達し、盧元大統領と金元大統領から答弁を受けて監査結果に活用した事実（李・朴元大統領は答弁拒否）も公開した。

与党は「聖域のない監査」を前面に出して文前大統領の調査拒否に対する全方向的攻勢を浴びせた。「国民の力」の鄭鎮碩（チョン・ジンソク）非常対策委員長は「退任した大統領に監査院が書面質問書を送るのは初めてのことではない。とにかく謙虚な気持ちで対応するのが良くないだろうか」と話した。「国民の力」の張東赫（チャン・ドンヒョク）院内報道官は「書面調査を拒否し、それでも足りず『無礼だ』と怒る文前大統領の態度は自身が話した『法の前の平等』をごみ箱に捨てるもの」と批判した。文在寅政権時代に監査院長を務めた「国民の力」の崔在亨（チェ・ジェヒョン）議員は「すべての国政に対し責任の頂点にあった文前大統領が監査院の書面調査すら拒否することこそ遺族と国民に対する非常に無礼な態度」と主張した。

北朝鮮に殺害された海洋水産部の公務員イ・デジュンさんの妻は中央日報に「召還調査を要求したのでもなく質問紙を送ったものなのにそれがなぜ無礼なのか。なぜ政治報復なのか。政治報復という主張は遺族に対する名誉毀損であり２次加害」と話した。

イ・デジュンさんの兄イ・レジンさんは民主党に向け「政治報復をうんぬんする資格があるのか。対国民詐欺をやめよ」と話した。彼は盧英敏（ノ・ヨンミン）元大統領秘書室長、李仁栄（イ・インヨン）元統一部長官、金洪熙（キム・ホンヒ）元海洋警察庁長を公務執行妨害、職権乱用権利行使妨害、虚偽公文書作成などの容疑で追加告発するとした。遺族らは６日にソウル中央地検に告発状を提出する予定だ。