米国で新型コロナウイルスの新たな変異であるオミクロン株の感染者が初めて確認された。感染者は新型コロナウイルスワクチン接種を完了しており、オミクロン株に対する既存のワクチンの「無力化」に関心が集まる。

米疾病管理予防センター（ＣＤＣ）は１日、オミクロン株と関連した初めての感染者がカリフォルニア州で確認されたと明らかにした。この感染者は先月２２日に南アフリカから帰国し、２９日に陽性判定を受けた。

バイデン米大統領の最高医療顧問である米国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長はこの日ホワイトハウスでの会見で「感染者は新型コロナウイルスワクチン接種を完了していた。ブースター接種は受けていないと承知している」と明らかにした。接種したワクチンの種類には言及しなかった。


ファウチ所長は「感染者は軽微な症状から好転しており、自宅隔離状態にある。濃厚接触者全員に対する診断検査を終えており、現在まで全員が陰性判定を受けている」と話した。ただ、濃厚接触者の数や検査人数には言及しなかった。

ＣＤＣが調査中の他の潜在的オミクロン株事例があるかとの質問にファウチ所長は「現時点で私が知る限りはない」と答えた。

ファウチ所長は感染者の症状が軽微なのはオミクロン株に対して何を物語るのかとの質問に「今回の件は医学界でいうＮ＝１該当事例」とし、１件の事例でオミクロン株の性格がどのようだとは断定できないと説明した。

ワクチン接種を完了した人がブレイクスルー感染した事例はデルタ株など以前の変異株でもたびたびあったため、今回の事例で既存のワクチンがオミクロン株に効能があるかないかを判断するのは早い。

だが米国内での初のオミクロン株感染事例がブレイクスルー感染であることがわかり、既存のワクチンの効能に対する疑問が広がる余地がある。

◇ファウチ所長「特定変異株に特化したワクチン、必要の可能性に備え」

ファウチ所長は既存のワクチンのオミクロン株に対する効能に対しては「分子プロフィールを見ればオミクロン株は感染力が強く、ワクチンの保護効果を回避するかもしれない」と前提にした上で、「特定変異株に特化したワクチンは必要でないのかもわからない。しかし特定変異株に特化したワクチンが必要な可能性に備えている」という原則的な回答を出した。

今後２週間から２週間半ほど過ぎればオミクロン株の感染力に対しより多くのことがわかるようになり、現在としてはワクチンとブースター接種がオミクロン株のような変異株に感染し重症化するのを防ぐのに役立つと強調した。

国民が日常生活の方式を変えなければならないかとの質問には「これまで通り予防ルールに従えば良い」と話した。２回目のワクチンを打ち、ブースター接種までして、他人のワクチン接種の有無がわからない大衆利用施設ではマスクを使うよう勧告した。

オミクロン株は先週南アフリカで初めて報告されてからこれまでに少なくとも１９カ国で確認された。

米国と南アフリカなどの医学専門家らはオミクロン株の感染力と致命力を調査しているところで、ワクチン企業は既存のワクチンの効能がどれだけ維持されるかを研究している。

バイデン大統領は先月２９日の国民向け談話で、オミクロン株の性格がわかるまで２週間ほど必要だろうと明らかにした。まだ１０日ほど残っているが、一部の専門家はワクチンの効能に対する意見を出している。

米製薬会社モデルナのステファン・バンセル最高経営責任者（ＣＥＯ）はオミクロン株に対抗する既存ワクチンの効能に「重大な減少」があると予想した。

これに対しファイザーとワクチンを共同開発したビオンテックのウグル・サヒンＣＥＯは既存のワクチンの保護力がオミクロン株に対しても維持されると予想した。

バイデン大統領とファウチ所長ら保健専門家はオミクロン株に対しパニックになることを警戒し、ワクチン接種とマスク着用、社会的距離確保など防疫対策に従ってほしいと呼び掛けた。