今年１－３月期のキムチ輸出額が史上最大となった。新型コロナの拡大の中、海外でもキムチが免疫力を高める健康食品という認識が広がっているためだ。「韓国キムチ名人第１号」であるハンソン食品のキム・スンジャ代表は「このような時こそ、キムチ宗主国を宣言すべきだ。宗主国の地位を失えば、歴史を奪われる」と話した。

韓国のキムジャン文化（晩秋から初冬にかけての季節に一斉に行われるキムチ作りの習慣と行事）は２０１３年国連教育科学文化機関（ユネスコ）の人類無形文化遺産に登録された。キムチ自体は登録されなかった。１７日、京畿道富川（キョンギド・プチョン）にあるハンソン食品本社で会ったキム代表は「わが先祖は１３００年前から数百年にかけてキムチを研究・開発して完成した」として「政府が出てわれわれのものを守らなければならない」と強調した。今年に入って浮上した中国の「泡菜（パォツァイ）」、日本の「キムチ」などキムチ宗主国をめぐる論議に対する反論だ。

キム代表は韓国初のキムチ名人（農林畜産食品部２００７年）であり、食品職人（雇用労働部・韓国産業人材公団２０１２年）だ。１９８６年ハンソン食品創業後、３５年間キムチにハマって生きてきた。創業当時、キムチを買って食べるのは想像もできない時期だった。家庭主婦だったキム代表は、高級レストランでまずいキムチを食べた後、創業を決心した。キムチなら自信があった。キム代表の母と祖父の手作りの味が優れた。キムチを漬ける日になると、町の隣人たちがキムチを得るために駆け集まるほどだった。


創業初期には消費者の不満があふれた。地域ごとに好むキムチの味が違ったためだ。全国誰もがおいしく食べられるように標準の味を探すため、夜を明かして研究した。特許を取得するために４歳の子どもの手を繋いで政府機関を回ったりもした。７年間末端の公務員から局長まで全部会って説得した。「キムチに狂った女」とも言われた。「国内初のキムチ名人」というタイトルも手に入れるようになった。

キム代表は計２８件の特許を取得した。伝統的なキムチの他に、特許キムチなど計１７５種のキムチを商品化した。ミニロール・ポッサムキムチ、エゴマの葉キャベツハクサイ巻きギムチ、干しブロックキムチなど固定観念を破るような数多くのキムチを開発した。キム代表は「エゴマの葉キャベツハクサイ巻きギムチ、エゴマの葉、キャベツなどを活用して胃腸の健康に役立ち、ダイエットにも良い製品」とし「辛くも塩辛くもなく、においも強くないため、海外輸出の架け橋となっている」と説明した。

キム代表は創業直後、高級ホテルから供給を試みた。外国人にキムチを知らせられる良いルートだと考えた。ホテルで偶然にキムチを味わった組織委員会側の要請で、８６年アジア競技大会にキムチを供給した。それから８８年ソウルオリンピック（五輪）など国際行事にはもれなくキム代表のキムチが登場した。

ハンソン食品は台湾、オーストラリア、欧州など２８カ国にキムチを輸出している。韓国ではホテルだけでなく、役場、大型病院、学校などにキムチを供給している。最近、マーケットカーリーなどオンライン食品ＥＣのチャンネルを通じて流通網を拡張している。年間売り上げは６００億ウォン（約５８億円）前後だ。

ハンソン食品のキムチは辛くも塩辛くもないのが特徴だ。キム代表は「ナシの果汁、大根おろし、玉ネギのすりおろしを直接入れ、塩辛ともち米も伝統的な方式で作る」として「レシピを徹底して守るため、変わりのない味を作ることができる」と強調した。

キム代表の夢は、海外の有名シェフもキムチを習うために留学を来る世界的なキムチ学校を建てることだ。キム代表は「フランスのル・コルドン・ブルーのようなキムチ学校を作りたい」とした。