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【コラム】自爆の時代=韓国

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版

【コラム】自爆の時代=韓国

それは自爆だった。正義の最後の砦が崩れていた。大法院(最高裁)院長と高裁部長判事の赤裸々な真実攻防に多くの国民が唖然としただろう。エリート判事が作った音声データをめぐる波紋は法曹界の裏側の「不都合な真実」に慣れている記者らにも衝撃的だった。いったいどこから間違っていたのか、整理するのも、受け止めるのも大変な「総体的難局」が繰り広げられている。

難局に至る過程はサイトカインストームを思い起こさせる。新型コロナウイルスの死亡率を高めるというこの症状は、体に浸透したウイルスに対抗する免疫作用が多すぎて正常な細胞まで攻撃する現象をいう。細胞と細胞の間でシグナルを伝達し免疫細胞を活性化する免疫たんぱく質サイトカインの誤作動作動エラーが原因だ。過剰生産された白血球は味方と敵を区別できない。体全体に炎症反応が起きさまざまな臓器が壊れ命の危険に至る。ウイルスを撃退した純機能がシステムそのものを壊す逆機能に急変する。ホラー映画の反転のような恐ろしい現象だ。

韓国の司法システムも自爆に達するほどエラーが累積した。裁判官の良心が理念のものさしで裁断され、司法府独立が立法府の足の下に置かれた。その結果良心を失った判事が独立を破った大法院長に録音データを突き付けた。古い法秩序を押し倒した彼を弾劾しようとして先に立った彼らは法服を脱いですぐ政治に飛び込んだ往年の判事だった。だれがウイルスでだれが白血球なのか混乱する。何が病気でどんなことが治療なのか。判事の良心、裁判官の独立、三権分立の憲法原則がすべて炎症の嵐に包まれた。


司法府に浸潤された「二律背反」がエラーの出発点だった。だれが見ても両立できない矛盾した2つの命題を司法権力はすべて持とうとした。国民の前では三権分立を語り、裏では政治に頼った。保守・進歩の大法院は違わなかった。最上の価値としていた裁判の独立、判事の良心は司法行政と司法改革の名で投げ出された。理念に分かれた裁判所構成員は相手陣営の二律背反のせいにしてダブルスタンダードの沼に落ちた。金命洙(キム・ミョンス)大法院長の偽りを暴露した音声データはそうして累積したシステムのエラーに起因した誤った免疫反応、サイトカインストームだった。

韓国最高の集団知性がこの有り様なら他の分野はどれほどだろうか。振り返ってみればあちこちで異常な免疫反応があり、自爆が起きた。韓国男女平等運動の先駆者だった朴元淳(パク・ウォンスン)前ソウル市長(故人)の女性秘書へのセクハラ事件もそのうちのひとつだ。悲劇が残した傷は7カ月が過ぎても癒えずにいる。陣営を守るために「被害訴え人」という表現を作り出し、被害者の告訴を漏洩する偽善的「言動」は事件を悪化させた。

進歩陣営と女性界は遅れて謝罪の声を出したが、すでに社会的信頼は少なくない打撃を受けた。国家人権委員会が朴前市長の行為をセクハラと判断した後も不都合な課題は山積している。朴前市長が設立した男女平等図書館に人権弁護士であり女性運動家として展示された故人の記録を今後どのような方法で残すのか、韓国社会はまだ答えを見つけられていない。

正義記憶連帯の後援金流用疑惑を提起した李容洙(イ・ヨンス)さんの憤怒も長時間累積した偽善に対する免疫反応だった。最近正義連の「省察とビジョン委員会」は、「政府と自治体の支援金や補助金を受けず内外の市民後援を基に財政を運営する」として再スタートを誓った。しかし30年以上続いた慰安婦問題に対する真正性を以前ほどに認められるのは容易ではないだろう。

性犯罪の親告罪廃止を主張した正義党では党代表のセクハラ事件が起きると「なぜ告訴しないのか」という批判が出てきた。「被害者中心に考えなければならない」という被害議員の抗弁にもかかわらずダブルスタンダードを疑う党内外の声を静めるのは容易でなかった。正義党のリュ・ホジョン(柳好貞)議員もやはり秘書を解雇して「不当解雇」議論に巻き込まれた。粗雑な説明はさらに強い免疫反応を呼び起こした。

進歩性向の新聞社では記者40人余りが「李容九(イ・ヨング)法務部次官の運転中暴行疑惑をかばう記事を書いた」としながらデスクを批判する声明を出した。同じ価値を追求するという教祖的信念に閉じ込められ組織の中の赤信号を把握できなかった。結果は自爆に匹敵する衝突だった。

文在寅(ムン・ジェイン)政権になって進歩陣営のあちこちで埋められ踏み付けられた大小のダブルスタンダードと二律背反のエラーが爆発臨界点に至っている。システムの小さなエラーでいつでも爆発しかねない大型時限爆弾を抱えることになったのだ。

キム・スンヒョン/社会2チーム長



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