「韓国が最高経営責任者（ＣＥＯ）にどれだけ過度な刑事責任を問うのかを見せる事例です」。

在韓米国商工会議所（ＡＭＣＨＡＭ）のジェームス・キム会長が１９日の記者懇談会で李在鎔（イ・ジェヨン）サムスン電子副会長の拘束に関し言及した。外資系企業団体であるＡＭＣＨＡＭの会長が韓国企業と企業家と関連し公式に立場を明らかにしたのは異例だ。経済界ではＡＭＣＨＡＭが裁判所の判決に対し論評したことそのものが前例がないほどだとし、それだけ韓国の企業環境が浅薄だという点を端的に見せたと判断している。

◇香港・シンガポール圧倒する司法リスク


キム会長はマイクロソフト韓国支社、ヤフー・コリア、韓国ＧＭなど外資系企業でＣＥＯを務めた企業家だ。韓国に進出した米国企業など約８００社を会員企業に持つＡＭＣＨＡＭの会長兼代表理事を２０１４年から８年にわたり務めている。

彼は李副会長の拘束について、「遺憾なニュースであると同時に韓国だけの独特の事例」と話した。続けて「韓国のＣＥＯは競合国より司法リスクに多く直面しており、経営活動に支障を受けている」と指摘した。韓国経済研究院の２０１９年１１月の分析によると、韓国で企業ＣＥＯになると２２０５件の法律項目で処罰を受ける恐れが生じる。

キム会長は韓国政府が改善すべき７種類の核心課題にも「過度な司法リスク」を含め、処罰水準の調節を要求した。彼は「韓国の法律順守費用はアジアの競合国よりとても高い。ＣＥＯが韓国で負担する法的リスクは、香港やシンガポールよりはるかに大きい」と強調した。キム会長は「サムスンは韓国企業だが世界市場でも重要だ。グローバルリーダーシップを持って（現状況を）勝ち抜いてほしい」と付け加えた。

◇未来成長可能性損ねる懸念大きく

サムスンでＣＥＯを務めた経営陣と経済学者も今回の判決に強い懸念を吐き出した。サムスン電子ＣＥ（消費者家電）部門代表（社長）やＣＲ（対外協力）担当副会長などを歴任した尹富根（ユン・ブグン）顧問は、「激動の時期を迎え素早く動かなくてはならないのにサムスンとしては機会損失ができるほかない状況。サムスンの未来に否定的な影響を与えるだろう」と指摘した。

サムスンＣＥＯらと事業部長（社長）で懸案には十分に対応できるが、大規模投資と買収合併など未来事業に向けた投資は萎縮するほかないという説明だ。尹顧問は「李副会長とＣＥＯが常に意見を交換しながら、社会の変化、特に買収合併と投資に関連して考えなければならない。李副会長の拘束で疎通が断絶するほかない」と話した。「獄中経営」に対しては「拘束されれば世の中が移り変わるのを見聞きする耳と目がふさがれてしまう。駆け足する時に手足を縛って走れというようなもの」と一蹴した。

李副会長は今後４週間新型コロナウイルス感染症関連の矯正当局の指針により弁護士を通じたりスマートフォンを利用した面会だけが可能だ。事実上役員の接見が不可能になるため経営空白を避けることはできないだろうという分析が出ている。

ソウル大学経営学科のイ・ギョンムク教授は「韓国企業でオーナー不在の状況がくれば経営陣は未来に対する投資を躊躇する傾向がある。サムスンの未来成長可能性が損なわれるだろう」と予想した。サムスン証券社長を務めたファン・ヨンギ韓米協会会長（元金融投資協会会長）は「最も恐ろしいことは企業家の萎縮。縮小指向的に経営する雰囲気が企業に浸透しないか心配」という懸念を示した。

彼らは李副会長の「不在」を解決しなければならないサムスン経営陣に助言も出した。ファン会長は「系列会社社長団協議体」の必要性を主張した。