「戦略的曖昧さ」は台湾海峡の安定を維持してきた米国の政策基調だ。米国が有事の際に台湾を防衛すると公言すれば台湾は生存空間を拡大し、中国は反発して台湾に圧力を加える。逆に防衛しないと公言すれば結局台湾は中国の手中に入る。このジレンマを解決する案がまさに曖昧さだ。１９７９年１月の米中修交後、中国と台湾の両岸関係を扱う米国の政策だった。

この数年間に曖昧さから明瞭さにシフトしている。２０１６年に当時米国大統領当選を決めたトランプ氏は台湾民進党出身の蔡英文総統に電話をかけた。前例のなかったことだった。その後台湾関連の米国の措置は多く見られたが代表的な措置は３つあった。

最初に、両国関係の公式性向上と高官の相互訪問。アザー米保健相、クラーク国務次官が台湾を訪問し、閣僚級である台湾の陳明通大陸委員会主任が米国を訪問した。２番目に、国際社会で台湾を支援する法案（台湾旅行法、台北法案）が通過した。３番目に、台湾への兵器・装備・技術提供、そして台湾軍との合同訓練などがある。措置の土台には「中国叩き」が位置する。


特に世人の関心を引く部分は台湾に対する兵器販売だ。一部を紹介すれば昨年Ｆ－１６Ｖ戦闘機６６機、Ｍ１Ａ２Ｔ戦車１０８台、スティンガー携帯用対空ミサイル２５０発などに続き、今年もＨＩＭＡＲＳ高機動ロケット砲システム、ＳＬＡＭ－ＥＲ空対地ミサイル、ハープーン対艦ミサイル、ＭＱ－９Ｂリーパー無人航空機、ＭＫ４８中魚雷などが販売されたり販売手続きを進めている。兵器の性格・種類・数量を見ると、先端軍事資産であり台湾の防衛力を大きく増加させられる兵器体系の組み合わせだ。

台湾に対する米国の措置があるたびに中国は大きく反発している。「ひとつの中国」の原則を順守せよとし、台湾問題は中国の主権と安保に直結した核心利益ということが中国外交部報道官の主張だ。修辞的警告のほかに中国の海軍・空軍力を動員して台湾海峡の中間線侵犯、台湾防空識別圏（ＡＤＩＺ）侵入など物理的実力行使が続いている。これもまた台湾と米国の即刻反応を呼び起こしている。中国語で「剣抜弩張（剣が抜かれ弓が引かれた一触即発の状況）」に近い状況が続いている。

◇台湾世論、バイデン３０％＜トランプ４２％

中国は台湾を国と認めないとし、あらゆる方法を動員して台湾の対外空間の拡大を阻止している。ところが中国に対する米国の強硬政策は超党派的で、政策決定者や一般国民の間に大きな差はない。今年米国世論調査機関ピューの調査によると米国人の６６％が中国に非好感を示した。新型コロナウイルスに対する中国政府の公開情報を信じられないという回答が共和党支持層は９２％、民主党支持層は７８％となった。こうした反中感情はトランプ政権、議会、そして国民の間に広がっている。昨年のＺＴＥに続くファーウェイ制裁、ヒューストン総領事館閉鎖、香港国家安全法関連制裁などはこうした反中感情があったために可能だった。


＜チャイナインサイト＞バイデン氏、台湾に向けた「戦略的曖昧さ」を天秤に…韓国の選択は（２）