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【コラム】孝道と韓国の未来

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
私は『韓国人だけが知らない別の大韓民国』を執筆した当時、韓国の伝統文化のうちどの部分が韓国の未来の発展で青写真の役割をするかを考えながら多くの時間を過ごした。韓国の未来で孝道が占めることになる価値について一つの章を書くことにし、概要を作成した。結局はやめた。韓国の友人の反応があまりよくなかったからだ。

韓国の人々は孝道が義務だと言いながらも、これといって孝道に対する情熱を見せない。しかし朝鮮時代の孝道は「珍奇な(quaint)」な習慣ではなかった。孝は抽象的な道徳と具体的な実践の間に橋をかける倫理体制の核心だった。また孝道は個人の領域と公共の領域を一つにして持続可能な政治体制を作った。

18世紀、中国人は韓国の孝道を高く評価した。中国人は年長者と先祖に対する韓国人の尊敬を文明社会の兆候だと把握したのだ。韓国の未来を設計する時、孝道を除こうとする考えは間違いだ。


私は安東(アンドン)にある儒教ランドに行ったことがある。ジオラマ(diorama)装置が堂々たる儒教ランドの建物を満たしている。漫画から飛び出してきたような人物が登場し、儒教的な価値を見せた。

このテーマパーク型展示体験館の趣旨は十分に理解できる。しかし残念ながら儒教的徳性の育成は後回しにされ、観覧客の誘致が目標とみられた。12歳以上の人々を引き込むほどの内容は特に見られなかった。

しかし我々の社会は孝道という意味に内在する他人に対する惻隠の心が切実に必要だ。韓国は現在、子が老父母を捨てることまで発生する国になってしまった。同じように家族から疎外され、絶望の中で自殺する若者も出てきている。

孝道は必ず復興させなければいけない韓国の伝統だ。しかし孝道を復活させるためには何よりも、孝道を完全に新しく再解釈しなければいけないということを受け入れる必要がある。そうしてこそ孝道が単に抽象的な概念ではなく、生きて呼吸する日常生活の一部になることができる。

根本的に新しい孝道を作り出すには想像力の動員が求められる。孝道の伝統を今日に合うように再解釈するには、芸術家と作家、そして普通の市民と一緒に作業する知識人が必要だ。こういう作業は「ブランド推進委員会」や広報コンサルタントではできない。

まず孝道は女性に対するすべての偏見から脱する必要がある。韓国社会は根本的に変化したため、儒教の伝統は性中立的(gender neutral)に変わらなければいけない。

先例がある。こうした改革の事例がユダヤ教とキリスト教の伝統からも数多く発見される。子孫が崇めるべき先祖には女性が含まれるべきであり、女性は祭事など儒教の儀式に男性と同等な方式で参加しなければいけない。伝統を改革することに失敗すれば、結果はその伝統自体の消滅だ。

また、孝道は道徳的な義務だけでなく自己理解(self-understanding)にいたる過程としても理解しなければいけない。

孝道は我々にとって真のアイデンティティーの核心だ。なぜなら、我々は先祖についてよく知らないが、我々は先祖の貢献が生んだ産物であるからだ。

孝道の伝統を復興させるにはストーリーテリングを活用するのがよい。親は先祖について子どもに話すことで、考えや体つき、そして経験がどのように過去の世代の先祖とつながるのか、子どもに悟らせなければいけない。

孝道はフロイト的接近法と似ている。しかし孝道はより建設的な心理学的理解を提供する。孝道を通じて子の人生で親が占める極めて重要な役割を知らせることができる。抽象的な科学的分析でなく親-子関係の肯定的なものを強化する日々の実践を通じてだ。

英国の哲学者バートランド・ラッセル(1872-1970)は1920年に北京で1年間滞在しながら講演活動をした。ラッセルは1922年に出版された『中国の問題』(The Problem of China)で、西欧国家で「ある個人の忠誠心を戦闘部隊に誘導する愛国主義」より儒教の孝道が政府を運営するのにはるかに望ましい体制だと指摘した。

この言葉には深い意味が込められている。孝道は個人の領域と国家をつなぐ統合的な哲学の可能性を提供する。孝道の哲学は過度に単純化された「理念」ではなく、軍国主義に容易に変質することもある「愛国主義」に依存することもない。

19世紀に西洋人は韓国人が過度に家族を強調すると批判した。しかしその孝道が韓国が帝国主義的な国家になるのを防ぎ、韓国が人間愛あふれる統治制度を維持することを可能にした。

エマニュエル・パストリッチ慶煕大国際大学教授

◆外部者執筆のコラムは中央日報の編集方針と異なる場合があります。





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