東京特派員時代の1997年にソフトバンクの孫正義代表に会った。まだ記憶に残っている印象的な話が多かった。
Q.在日韓国人3世だが、本当の祖国は韓国なのか日本なのか。
「これまで私の祖国はコンピュータだった。今後インターネットが新しい母国になるだろう」(彼はソフトウェア流通で成功し、1年前の96年にヤフーの株式35%を取得した)
Q.子どもは娘だけ2人だ。会社をだれに譲るのか。
「30代までは資金を集め、40代で正面勝負をかけるつもりだ。50代でビジネスモデルを完成し、60歳でリタイアする。娘たちには20億~30億ウォンだけ譲るだろう」(当時彼は40歳だった)
Q.投資原則は何か。
「成功確率50%に投資するのはバカだ。90%の確率まで待てばあまりに遅い。私は70%の成功確率に投資する」。
孫正義は40代に数多くの勝負に出た。超高速インターネットに進出し米国のスプリントも買収した。だが本当の大当たりは43歳だった2000年に2000万ドルを投資した中国のアリババだった。彼は馬雲の隠れた「師匠」だった。ヤフー創業者のジェリー・ヤンが万里の長城を訪れた時に通訳として知り合った馬雲を孫正義に紹介した。彼は6分間馬雲に会った後に営業秘訣をすべて教えた。「私のヤフージャパンは日本でイーベイとグーグルを押さえた。アリババも中国式プラットフォームを構築しなさい」。彼の教えに従ったアリババは3年でイーベイを中国から追い出すのに成功し、世界最大のオンラインショッピングモールとして浮上した。孫正義の株式価値は2000倍も上がり70兆ウォンに達した。
先週孫正義が再び話題の人物となった。「まだシンギュラリティ(技術的特異点)と関連がやることが残っている。あと10年さらに社長として働きたい」と明らかにしたのだ。彼は「人類史上最も重大な特異点の到来を控え経営意欲が出てきた」と告白した。
当初60回目の誕生日である来年8月11日に退くのが彼の人生計画だった。このようにシンギュラリティは孫正義の人生をひっくり返すほど、コンピュータとインターネットを跳び越える革命的パラダイム転換である。彼のリタイア翻意で後継者であるニケシュ・アローラ副社長(48)が退いた。
「シンギュラリティ」はもともと科学用語だ。数学で「0」に限りなく近づき関数値が突然陽と陰に変わる地点をそのように呼んだ。物理学ではブラックホールの体積が「0」であり密度が無限大に達する瞬間をいう。時間・空間などすべての物理法則が崩壊する地点だ。
だがいまのシンギュラリティは人工知能(AI)分野から由来した普通名詞だ。グーグルのAI責任者であるレイモンド・カーツワイルが書いた『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』(2005年)に初めて登場する表現だ。技術の進歩でAIが人間を上回る時期、すなわち人間がこれ以上AIに追いつけなくなる限界点を称する単語だ。当時カーツワイルはその時期を2045年と予測した。この本が出た後、グーグル、テスラ、アマゾンなどがAIに参入した。ここに孫正義まで加勢するのを見れば少なくともわれわれの世代中にシンギュラリティが来るには来た模様だ。
筆者が19年前に記者生活を辞め孫正義のまねをしていたとすれば人生が変わっただろう。そんな孫正義がAIを新たな祖国とすることを決意した。「70%の成功確率」のおばけである孫正義が「シンギュラリティが来る」というならそう信じるのが良いだろう。
グーグル創業者であるセルゲイ・ブリンも似た予言をした。彼は「また大学に通うならスタンフォード、MIT、ハーバードではなく、米航空宇宙局(NASA)のシンギュラリティ・ユニバーシティに行く」とした。そこでは人間の思考では予想しにくいあらゆる科学技術が想像の翼を広げる。「すべての革新的な技術は当代には魔術のようだった」がこの大学のモットーだ。
当面は英国のEU離脱も重要で来年の韓国大統領選挙も重要だ。だが、1回ぐらいは指数関数(ますます増加率が爆発的に大きくなる関数)的発展を繰り返すAIと、目の前に差し迫ってきた「シンギュラリティ」にも視線を転じれば良い。筆者のように孫正義を信じずいまになって地団駄を踏んで後悔しないようにするならばの話だ。
イ・チョルホ論説室長
Q.在日韓国人3世だが、本当の祖国は韓国なのか日本なのか。
「これまで私の祖国はコンピュータだった。今後インターネットが新しい母国になるだろう」(彼はソフトウェア流通で成功し、1年前の96年にヤフーの株式35%を取得した)
Q.子どもは娘だけ2人だ。会社をだれに譲るのか。
「30代までは資金を集め、40代で正面勝負をかけるつもりだ。50代でビジネスモデルを完成し、60歳でリタイアする。娘たちには20億~30億ウォンだけ譲るだろう」(当時彼は40歳だった)
Q.投資原則は何か。
「成功確率50%に投資するのはバカだ。90%の確率まで待てばあまりに遅い。私は70%の成功確率に投資する」。
孫正義は40代に数多くの勝負に出た。超高速インターネットに進出し米国のスプリントも買収した。だが本当の大当たりは43歳だった2000年に2000万ドルを投資した中国のアリババだった。彼は馬雲の隠れた「師匠」だった。ヤフー創業者のジェリー・ヤンが万里の長城を訪れた時に通訳として知り合った馬雲を孫正義に紹介した。彼は6分間馬雲に会った後に営業秘訣をすべて教えた。「私のヤフージャパンは日本でイーベイとグーグルを押さえた。アリババも中国式プラットフォームを構築しなさい」。彼の教えに従ったアリババは3年でイーベイを中国から追い出すのに成功し、世界最大のオンラインショッピングモールとして浮上した。孫正義の株式価値は2000倍も上がり70兆ウォンに達した。
先週孫正義が再び話題の人物となった。「まだシンギュラリティ(技術的特異点)と関連がやることが残っている。あと10年さらに社長として働きたい」と明らかにしたのだ。彼は「人類史上最も重大な特異点の到来を控え経営意欲が出てきた」と告白した。
当初60回目の誕生日である来年8月11日に退くのが彼の人生計画だった。このようにシンギュラリティは孫正義の人生をひっくり返すほど、コンピュータとインターネットを跳び越える革命的パラダイム転換である。彼のリタイア翻意で後継者であるニケシュ・アローラ副社長(48)が退いた。
「シンギュラリティ」はもともと科学用語だ。数学で「0」に限りなく近づき関数値が突然陽と陰に変わる地点をそのように呼んだ。物理学ではブラックホールの体積が「0」であり密度が無限大に達する瞬間をいう。時間・空間などすべての物理法則が崩壊する地点だ。
だがいまのシンギュラリティは人工知能(AI)分野から由来した普通名詞だ。グーグルのAI責任者であるレイモンド・カーツワイルが書いた『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』(2005年)に初めて登場する表現だ。技術の進歩でAIが人間を上回る時期、すなわち人間がこれ以上AIに追いつけなくなる限界点を称する単語だ。当時カーツワイルはその時期を2045年と予測した。この本が出た後、グーグル、テスラ、アマゾンなどがAIに参入した。ここに孫正義まで加勢するのを見れば少なくともわれわれの世代中にシンギュラリティが来るには来た模様だ。
筆者が19年前に記者生活を辞め孫正義のまねをしていたとすれば人生が変わっただろう。そんな孫正義がAIを新たな祖国とすることを決意した。「70%の成功確率」のおばけである孫正義が「シンギュラリティが来る」というならそう信じるのが良いだろう。
グーグル創業者であるセルゲイ・ブリンも似た予言をした。彼は「また大学に通うならスタンフォード、MIT、ハーバードではなく、米航空宇宙局(NASA)のシンギュラリティ・ユニバーシティに行く」とした。そこでは人間の思考では予想しにくいあらゆる科学技術が想像の翼を広げる。「すべての革新的な技術は当代には魔術のようだった」がこの大学のモットーだ。
当面は英国のEU離脱も重要で来年の韓国大統領選挙も重要だ。だが、1回ぐらいは指数関数(ますます増加率が爆発的に大きくなる関数)的発展を繰り返すAIと、目の前に差し迫ってきた「シンギュラリティ」にも視線を転じれば良い。筆者のように孫正義を信じずいまになって地団駄を踏んで後悔しないようにするならばの話だ。
イ・チョルホ論説室長
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