都市風景と光の描写が目を引きつける新海誠監督の『君の名は。』。(写真=Media Castle)
主人公の瀧(左)と三葉(右)
神社の長女である三葉は、東京で暮らす少年になるという不思議な夢を見る。東京に住む少年の瀧も田舎町の少女になる変な夢を見る。夢というにはあまりにもリアルに思い出される出来事の数々。「一体君は誰?」1000年ぶりに来訪するすい星は大災害をもたらし、瀧と三葉はこれを防ごうと孤軍奮闘する。
映画の中の大災難は2011年3月に発生した東日本大震災に対する隠喩的な表現と読むことができる。「忘れたくない人、忘れたくなかった人、忘れちゃいけない人」というナレーションが特にそうだ。しかし、『君の名前は。』はパニック映画ではない。この映画が注目しているのは大災害の中で運命のようにつながっている人々だ。巫女である三葉の祖母が口にする、「結び」という言葉は見えない糸でつながった人々の関係を意味する。この映画が心を打つのは、巨大な自然災害に対抗して「人を救う話」として再構成されているためだ。昨年10月、釜山(プサン)国際映画祭を訪れた新海監督は「3月11日の大地震の後、多くの日本人が『もしそんなことが起きなかったら、彼らが生きていたなら』と考えるようになった。みんなが幸せになれるようにとの思いでこの映画を作った」と話した。
これまで新海監督が手がけた作品の多くはハッピーエンドとはほど遠かった。キャラクターはいつも寂しがっていて、喪失感に苦しんでいた。代表作として挙げられる『秒速5センチメートル』(2007)、『言の葉の庭』(2013)の主人公もみな同じだ。だが、今回は違う。映画コラムニストのシン・ミンギョン氏は「新海監督は今回の『君の名は。』をハッピーエンド作品として作り、同時代の人々と交感し始めた」とし「美しいロマンスを越えて『すべての人と人がつながっている』というあたたかいメッセージをSF作品の中に落とし込み、その作家性もまた遺憾なく発揮した」とコメントした。
特に、日常の美しさにかけては卓越した描写力を誇り、「光の魔術師」とも呼ばれている新海監督は、地球へ流れるすい星の光を美しい映像で表現した。米バラエティ誌は「今後、新海監督よりも美しい風景を演出できるアニメーターを探すのは難しいだろう」としながら「宮崎駿監督の匠の精神を新海監督が受け継いでいる」と好評した。新海監督は同作を通じて作家主義のアニメーターから巨匠へと大きく成長した。
この記事を読んで…